2005年 10月 19日(水)

労働法に関するQ&A(27)宗教祝日ボーナス支給[労働]


Q1.宗教祝日手当金(THR)についてお尋ねします。

Q1-1.当社では、今週THRを払うのですが、今年7月に入社した者は、勤務が1年未満ですので勤続月数に応じて支払うことになります。その場合、支給日である10月20日まででカウントするのでしょうか、それとも断食明けの大祭の日11月3日まででしょうか?

A1-1.これは、11月3日までで計算するのが通例です。THRに関する大臣通達1994年第4号を見ますと、その第3条に12カ月未満の従業員に対するTHRの計算式が書かれていますが、いつまでを在職期間と計算するかは規定されていません。ここのところを弁護士に確認しますと、次のように申しております。

第6条に「宗教的祝日より30日前に退職した従業員はTHRを受給する権利を持つ」と書かれており、支給日ではなく宗教的祝日を基準としています。よって、在職期間を計算する場合も、同様に宗教的祝日までとすべきです。

Q1-2.キリスト教など他の宗教の場合は宗教的祝日が異なりますが、THRの計算の為の在職期間の計算は全てイスラム教の宗教的祝日に合わせてもよいのですか?

A1-2.こういう細かい規定は法令の中にありませんが、以下のように考えるべきだと思います。 支給する日をそれぞれの宗教的祝日に合わせるならば、在職期間の計算も別々にしますが、支給日を統一するならば、在職期間の基準日も統一すべきです。

Q1-3.THRは宗教的祝日の2週間前に支給する事になっていますが、THR支給後にすぐ辞めた場合は、どうにかできますか?

A1-3.これは致し方ありません。宗教的祝日の30日前在籍者には受給の権利があるので法的には何も請求できません。

Q2.弊社は、来年ブカシ地区に進出を計画しているのですが、3シフトで365日稼動を考えています。しかし、当地の祝日は宗教的な意味合いが強いので、休日出勤の指示には注意したほうがいいと聞きました。具体的にはどういう点に注意すべきでしょうか?

A2.当地の祝日は正月1日と独立記念日以外は全て宗教的な意味合いがあるものです。その中でもイスラム教に関係ある祝日の対応には十分に留意なさってください(ジャカルタ周辺では、イスラム教徒=ムスリムが圧倒的多数です)。特に犠牲祭と断食明けの大祭が重要な祝日ですが、月の満ち欠けをもとに決めるので、毎年直前まで日時が決まりません。従って、貴社のように365日稼動で考えられるところはともかく、一般の工場では土日になるか平日になるかで、残業代の有無に影響しますので大騒ぎとなります。

また注意すべきは、断食明けの大祭に連続した<一斉休暇取得日>という制度です。

来年は10月23、26、27日が指定されていますが、これは有給休暇を強制的に落として休みとしなさいと政府が指導する休日です。ブカシ地区ではこの日に働かせると休日出勤手当てを払わねばなりません。

ジャカルタでは、別の時期に連休を与えれば休日出勤手当ては要らないのですが、ブカシでは手当てを払わないといけないという指導が昨年はなされました。これも明文化されたものはありませんので、毎年確認すべきです。(クリスチャンはクリスマス前後に有休を集めて長期休暇としますので、レバラン=断食明けの大祭のときに休みません。ジャカルタの会社にはクリスチャンだけのところがありますので、上記のような措置が取られます)このように、この問題についても地方自治体によって労働省の指導が異なりますのでご注意ください。

Q3.来年メッカ巡礼を計画している社員がおりますが、当社では前例がなく会社規則に具体的な規定がありません。そこでお尋ねします。

Q3-1彼が正式に希望を出してきたときには、認めないといけないのですね。

A3-1.当地の場合、メッカ巡礼は労働法の中でも国民の権利として保障されていますので、特別有給休暇として認めなければいけませんが、その日数については毎年宗教省が決め、旅行会社がパックツアーを組みます。高いコースと安いコースがあるようで、日数が違います。毎年、人数の枠がありますので、巡礼を希望する人は頭金を払って申し込み、巡礼参加の権利を確保します。従って、貴社の従業員もその振込み用紙を持ってくるはずです。もしくは総務から、この振込用紙を提出するように指示されるとよいでしょう。

普通の会社員にとっては、1生に1度のことですので、前後に有休休暇を追加して臨むことが多いようです。従って、他社の会社規則/労働協約では40日までというような日数制限が掛けてあるところがあります。

Q3-2「賃金保護に関する政府通達1981年第8号」第6条4項に「労働者が 宗教上の必要性からその必要とする機関、宗教的責務を果たす為に 労働を行うことが不可能な場合は、経営者は給与を支払い続ける 義務を負う。但し、3カ月をその限度とする」と書いてありますが、 会社規則で40日までと決めても 問題はありませんか?

A3-2.問題ありません。HAJIの称号を与えられるメッカ巡礼は個人で勝手に行けるものではなく、基本日数は宗教省の指示に従うからです(実際に日数制限を規定している会社規則/労働協約は労働省の承認を得ているものです )。

※ 個人で勝手に行く巡礼(UMROH)は、個人の年休を使わせます。

Q3-3既存の会社規則に規定を設けていない場合は、すぐに会社規則を 変更するしかないのでしょうか?

A3-3.そうすべきですが、これは役員会決定書で十分でしょう。最寄の労働省に確認してください。

Q3-4それとも、会社規則を変更せず、巡礼日数の最も短いものを会社が特別有給休暇として認め、本人を説得するという方法では問題がありますか?

A3-4.両者で合意されれば問題ありません。

Q4.従業員の降格について教えてください。今回不正を働いた従業員の降格を考えております。管理職から2段階落として一般職の一番上への降格を考えています。当然給料も下がりますが、このように管理職から一般職への降格で、何か注意点はありますか?

A4.以下の諸点がポイントです。

1)明確な理由があること。すなわち、組合や労働省にも説明できるデータや証拠があること。

2)2クラス以上の降格の場合、1クラスのみの場合と何が違うのか、理由が明確であること。

3)減給は、給与テーブルに基づいたものであること。

4)組合の委員長には予め説明しておくこと。

※ 貴社の会社規則や労働協約において、降格と減給の規定はどうなっているでしょうか。

この規定がない、あるいは不明確な場合は、最寄の労働省に相談されてから実行されたほうがよいでしょう。(減給を禁じた規定など法令の中にはありませんので、減給は可能ですが、最低賃金との関係から労働省は慎重な対応を要求してきます。そもそも減給規定自体が法令の中にありませんので、会社規則などで明確に定めるべきです。)

Q5.営業社員が病気をして復帰後、軽作業への転換を希望した場合、本来採用目的、期待業務から外れてしまうのですが、こうした場合会社が取り得る対応としては、本人の求めに応じて、総務的あるいはクラーク的な仕事への振り替えを行なうことぐらいでしょうか。退職勧告などは難しいでしょうか?

A5.「能力不足による解雇」の場合、労働省は一度配置転換をしてみるようにという指導をしてきます。そこでも使えないようであれば解雇しても宜しいという判断をします。問題の従業員が労働省に駆け込んだ場合は、上記のような指導がなされますので、今回は配置転換をされたほうが賢明でしょう。

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