2005年2月2日

第22回経済補償金は費用ではないのですか???


中国労働法においても規定されている“経済補償金”。日本の習慣でいうところの“退職一時金”と認識されていますが、中国の税法上はどうも取り扱われ方が異なるようです。

Aさん:「今回、残念ながら多数の退職者を出すことになり、労働法に従って算定した経済補償金を各退職者へ支給しました。それで、この経済補償金を管理費用として処理していたら、先日税務局の調査が入り、経済補償金の損金算入について否認されました」

Bさん:「なんで?」

Aさん:「以下の文件が根拠だそうです」

◇◇◇◇

根拠通達(国税「2001」918号)

一定の労働期間、一定の年齢または定年退職年齢に近い従業員に対する一時的に支払われる生活手当および労働契約を解除した従業員に対する一時性補償支出(退職繰上者への補償金支出)等については、「企業所得税課税所得からの控除弁法」(国税発「2000」84号)第2条に規定している“課税対象収入と関連するあらゆる必要および正常支出”の原則に基づくものとして、課税所得額から控除できる。

ただし、各種補償金の支出額が多額で、一括処理する場合の当該年度課税所得額に大きな影響を及ぼす場合であれば、以降の年度で平均的に償却できる。

具体的な償却期間については省(自治区、直轄市)税務局が該当地区の実際状況に基づき決定することができる。

根拠通達(天津地方税務局「2002」1号):

天津市において、一定の労働期間、一定の年齢または定年退職年齢に近い従業員に対する一時的に支払われる生活手当および労働契約を解除した従業員に対する一時性補償支出(退職繰上者への補償金支出)等については、1人当たり支給額が天津市における前年度平均賃金の3倍(3倍を含む)を超えない金額を、当年課税所得から控除することができるとし、前年度平均賃金の3倍を超えた部分については原則として3年間での均等償却することとする。

◇◇◇◇

Bさん:「……根拠になっとらへん!この2つの規定上は処理方法に制限があるだけで、損金性は認めてるやないですか!!」

Aさん:「1つ目の通達をよく読んでください。これは、“中国電信集団江西省電信公司”即ち中国国有企業からの問い合わせへの回答です」

Bさん:「それで?」

Aさん:「中国には“中国国内企業が適用対象となる企業所得税法”と“外国投資企業および外国企業が適用対象となる企業所得税法”とがあるんです。これら2つの文件は中国国内企業の企業所得税法の補完通知として税務局は取り扱っているのです。なぜなら、その問い合わせ元自体が国有企業だからです」

Bさん:「でも“課税対象収入と関連するあらゆる必要および正常支出”の原則は、中国企業も外国企業も同じでしょうに」

Aさん:「……」

(筆者注)外商投資企業が支給する経済補償金に関する税務上の取扱規定について明確なものはなく、その損金性についても不明確です。今後の対応に注目です。

※(本稿は税務会計上のポイントを実践形式で解説したものです。著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません)


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