2004年11月24日

第17回個人所得税調査の最新状況と情報交換


今月に入り、上海、広州など複数の地区で、外国籍個人を対象にした個人所得税の納税状況調査が始まっています。これには、所轄地区の企業に働く各個人の納税資料の提出および必要に応じた修正申告を要請する企業単位の自主調査と、税務局員が特定の外国籍個人の某年度の所得について確認する特別調査とがあります。

前者は特に本年に出ました修正申告を奨励する通達(国税発2004年27号)の裏返しということで、過去の申告が正しいことを確認する意味の調査でしょう。過去3年(2002年度以降現在まで)の給与、賞与、利子、配当、その他各所得項目と既納税額、未納税額があればその金額を所定のフォームに記載します。来年以降、国家税務総局が全国キャンペーンを行って調査を奨励することも予想されており、必要であれば今のうちに修正すべきものは修正しておいた方が無難でしょう。

さて問題は後者です。調査官がある特定年度のあなたの給与に絞り込んで質問をしてくることがありますが、この場合に用心すべきは日中税務当局間の情報交換です。

日中租税条約第26条には「両締約国の権限のある当局は、(途中略)租税に関する脱税を防止するために必要な情報を交換する」とあり、行政の通常の運営において入手することができる情報、具体的には源泉徴収や確定申告を通じて税務署(国税庁)が入手する所得情報を相手国の税務当局に提供します。

実際の調査通知書には「個人所得税自主申告納税暫定弁法(国税発1995年77号)の規定に基づき、国外で取得する国外源泉所得は居住地国の税務当局に申告納税すべきである」とあり、中国で勤務する見返りである給与、賞与以外の、所得の源泉地が中国ではない国外源泉所得についてもここで申告納税の対象とするよう要求しています。

ベテラン狙い撃ち、株売買益も

77号通達では、所得源泉地国(日本)での納税年度が終了し申告納税を行ってから30日以内に居住地国である中国で申告することを求めています。確定申告が毎年3月15日ですから申告納税対象所得であれば4月15日までに、源泉徴収で確定する所得については年明け後1月末までに、中国での申告納税が必要です。国外源泉所得の申告義務が課されるのは満5年を超えて中国に滞在する外国籍個人でしたね。中国滞在歴の長いベテランが狙われています。家賃収入、株の売買益、その他不労所得がある場合には、その所得を中国で申告納税するにつき、二重課税防止のため日本で支払った税額を控除することはできますが、中国の税率が高ければ多くの税額を支払う必要があります。

こういった全世界所得をベースにした確定申告は規定としてはあるものの、調査対応ではなく自主申告を原則に制度化していくのかはまだ分かりません。それでも申告納税システムの整備状況のスピード次第で、翌2005年度の所得から制度化される可能性は否定できません。給与所得であれば会社が負担してくれても、それ以外の所得は個人負担が原則。帰るか残るか、稼ぐか手控えるか、来年の去就と実入りの計画と対策を今のうちに立てておきましょう。

※(本稿は著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません)


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