2004年10月13日

第14回APAって、なに?


最近、中国でAPAに関する新しい規定が出されたという。でも、APAってなに?なんでも移転価格に関する制度らしいが、どんなものだろう。

移転価格とは、関連会社(たとえば親会社と子会社)の間で行なわれる取引の価格のこと。この価格をどのように決めるかによって、それぞれの会社の利益が決まり、課税所得が決まる。

関連会社ではない独立した会社間で行なわれる取引の価格に比べて、移転価格が不当に高かったり、安かったりすることによって、一方の会社の課税所得が本来の課税所得より少なくなっていると、その会社の所在国(地域)の税務当局が判断すれば、その会社の利益(課税所得)は本来得るべき水準に更正される。これが移転価格税制である。

税務当局による移転価格の更正を回避するためには、関連会社との取引の価格が、一定のルールに従い、結果として独立した会社間で行なわれる取引の価格と同じになるように決められているということを説明できなければならない。しかし、そのようなルールを設けて価格を決めていたとしても、税務当局による移転価格の調査、更正を回避できる保証はない。

移転価格の更正リスク回避

移転価格の調査、更正を回避するために、関連会社との取引価格設定のルールについて事前に税務当局の合意を得ておくものが、事前確認(Advance Pricing Arrangement:APA)である。

このたび2004年9月に国家税務総局から「関連会社間取引の事前確認実施規則(試行)」(国税発[2004]118号)が出されて、APAの具体的な手続きが明らかになった。この実施規則によればAPAは

予備会談(APAの正式申請に先立って会社と税務当局が行なう。APAの実行可能性を検討し、方向づけをするための話し合い)
会社によるAPAの正式申請
税務当局による申請内容の審査
審査結果に基づく会社と税務当局の合意に向けた協議
事前確認協議の締結(中国のAPAでは、会社と税務当局が移転価格設定のルールに関する合意内容について書面の協議を締結する) ――という流れで行なわれる。

その後、会社は合意したルールに従って関連会社との取引価格を決め、税務当局は毎年、ルールが守られていることを確認することになる。

会社にとってのAPAの大きなメリットは、前述のとおり、将来の一定の期間(通常は2~4年)にわたり、移転価格の調査、更正のリスクを回避できること。それに、税務当局の調査が更正を目的にして行なわれるのに対して、APAでは移転価格設定のルールに対する双方の合意を目的に、会社と税務当局が対等な立場に立って話し合いを進めることができる。APAは税務当局にとっても調査コストの軽減につながることから、会社がAPAを望めば、税務当局も積極的な姿勢をとるだろう。

会社がAPAのメリットを生かそうとするなら、もちろん十分な準備が必要だ。税務当局に受け入れてもらえるような移転価格設定のルールを考えなければならない。会社と関連会社との取引に適するルールはどのようなものか。はじめにそれを分析することは、たとえAPAを申請しない場合であっても、移転価格調査に対する有効な備えとなるだろう。

※(本稿は税務会計上のポイントを実践形式で解説したものです。著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません)


NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン