2004年9月1日

第11回税務をめぐる問題~移転価格税制の巻~


税務局から移転価格調査の通知書が隣の会社に届いたらしい。うちの会社は大丈夫だろうか?またまたひとつ「親しみやすさ」が身上の、日本の会計士さんに聞いてみよう。

移転価格は「値決め」の問題

お久しぶりですね、今度は移転価格ですか。実際、最近多いです、この話。

これは簡単にいえば、親会社や子会社、兄弟会社との間の値決めに税務局がもの申すことです。国を跨いだ取り引きではどちらの会社(国)に利益を落とすかは、両社で決める価格次第ですからね。

だからといって、税務局は仕切価格を変えろというわけじゃなく、税金計算上、取引価格をいくらとみなしますよ、というだけです。例えば、日本の本社に対して中国の子会社が「安く」製品を販売すると、本社は儲かりますが、子会社は割を食う、結果的に子会社の納税額が少なくなる。これでは中国の税務局は税収が減ってしまいますので、親子間の取引価格を「独立した会社同士であればそうなるはずの価格」を参考に調整し、中国子会社の課税所得を増やして税金を追徴するのです。

グループ会社がいくつもあって内部取引を行うのであれば、どこかが独り勝ちするのではなく、それぞれの会社が相応しい時期にそれなりの利益をあげ、そうでないなら会社をたたむ、というバランスが必要です。また、この身内の「値決めの法則」を第三者(税務局)に対して体系的、理論的かつ明確に説明できるかどうかがポイントであり、つまるところ、移転価格はバランスとポリシーの問題なのです。あとは結局、どれだけ高いか安いかの程度問題で、どんな会社と比べるか(選択の論理)と、数字の取り方と補正(統計学の問題)ですが、これは専門家に任せておけばいいでしょう。

今年の重点調査対象

次に税務局はどのようにして移転価格調査対象会社を選定するのか、という話をしましょう。今年は特に、長期的に損失がある会社利益が僅少にもかかわらず継続的に経営規模を拡大している会社損益の変動幅が大きい会社、について重点的に調査するよう、通達が出されました。

どれどれ、御社は。結構順調に売上伸ばしていますね、ここ数年。で、収支トントンじゃないですか、ずっと。気をつけときましょう。 税務局は、全部の会社を調査するわけにはいかないですから調査対象を選ぶわけですが、そのときは決算書や確定申告書などを手がかりに、まず書面調査を行ったうえで課税調整できる可能性の高い会社を選び、訪問調査を行います。

最近は税務局も所轄内の会社のデータベースだけでなく、全国レベルのデータベースを揃えているとも言われていますので、華南の同業他社の利益率と比べて低い、ということになるかもしれませんよ。あと、税関の通関記録をもとにした調査もあり得ます。税関コードを基準にしていろいろな会社の輸出価格の統計をとり、貴社の輸出価格と比べるのです。

移転価格調査は書面通知を受け取って本格的に始まるのですが、通常は書面通知から60日以内にいろいろな資料を提出する必要があります。税務局との交渉を有利に進めるためにも今のうちに御社が絡む取り引きの全体的な利益構造を把握し、グループの「値決めのルール」を整理し、文書化しておくことです。価格や利益が他社と比べて高いか低いか、比べたり理屈こねたりするのは任せてください。

おっともうこんな時間ですか。続きは場所変えて、森ビル裏のxxあたりに行きましょうか。

※(本稿は税務会計上のポイントを実践形式で解説したものです。著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません)


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