2004年8月4日

第9回信頼していた部下が着服!?想像したことありますか


日系香港会社で勤務するX氏は、10年ほど前に日本の親会社より香港子会社の社長としての勤務を命じられました。赴任当時はまだまだ香港内での仕事が多かったものの、時代の変化とともに営業活動の中心が中国国内と変わり……

営業活動が忙しくなったため、ローカルの会計担当者Yを採用し、Yに日常の資金管理や経理処理等の仕事を任せるようになりました。Yは非常にまじめかつ優秀で片言の日本語も覚え、数年後にはX氏より絶大なる信頼を得るまでに成長しました。

急激に伸びている中国市場に進出している香港子会社に対して親会社から非常に大きな期待が寄せられ、X氏自身も親会社の期待にこたえるべく営業活動に邁進し、この数年は非常に良い結果を出していました。

一方でX氏は、多忙な営業活動のため社長としての管理業務に割く時間が著しく少なくなりました。1週間に半日程度香港の事務所に立ち寄り、1週間分の小切手やその他の重要な書類へのサインと山済みになった書類の整理を行なっていました。

機械的サインに落とし穴

小切手や書類にサインするといっても、いちいち詳細に目を通すことはできなくなり、機械的にサインしているだけの状態になっていました。また月次の決算報告についても信頼しているYが作成してきたものを本社に報告するだけで、内容を十分に確認することさえなくなりました。

ある日、会計監査人が仮払金残高が異常に多額であることに対して不審に思い会計担当のYに説明を求めたところ、「出張者への仮払金の清算が終わっていないためだ」とYより回答がありました。しかしながらYより詳細情報が提出されなかったため、監査人はその旨をX氏に報告するとともに社内調査を依頼しました。社内調査の結果、X氏が信頼していたYが架空の小切手を作成し、X氏のサインを入手した後に現金化、そのまま着服していた事実が明るみになりました。

上記事例において、皆さんはどのようことを感じられましたでしょうか。少人数で運営を強いられている日系子会社にとっては、上記のようなことは他人ごとではありません。不正の摘発もしくは未然防止のためには、それなりの仕組み作りが必要になります。この仕組みのことを内部統制(Internal Control)と呼んでいます(厳密な内部統制の定義は、複雑ですのでここでは簡略化しています)。

重要な内部統制の一つに、現金管理があります。上述のような不正発生を未然に防止するためには、次のような内部統制を構築することでその発生の可能性をかなり低くすることが可能になります。

◇現金を管理する担当者と、会計帳簿を記帳する担当者を分ける
◇日々、現金実査を実施し、金種表を作成、報告させる
◇月末の現金実査時には、社長自ら(ないしは上席者等)が立会う
◇出張者ごとに出張仮払金の明細および仮払金精算の明細を作成させ、報告させる
◇毎月、銀行残高と帳簿残高との差額について、調整表を作成させる

内部統制は、企業活動のあらゆる局面に当てはまる概念です。現金管理以外に受注管理や債権管理、生産管理や在庫管理なども内部統制の一部です。効率的な内部統制を整備し、運用することが企業活動の上では非常に重要です。貴社の内部統制はいかがですか?

※本文は著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません


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