2004年6月9日

第5回“熱点”三題~増値税・関税・個人所得税~


去る5月に上海、無錫、大連、北京、天津、広州、成都、重慶の中国8都市で500人以上の皆様に参加頂いたセミナーのアンケート結果につきご紹介します。

有効回答は228件、華北(36%)、華東(55%)が多く、相対的に華南(5%)、西部地域(5%)のデータが少ないことを、あらかじめご了解ください。また日系製造業(64%)の皆様からの回答が中心です。なお、同セミナーは東京、名古屋、大阪、京都の4都市でも開催され、約1,000人の方に参加頂きました。

1. 増値税の還付問題

還付対象企業の約半数が、昨年末までの税額がほぼ還付されたと回答しました。早期還付に対する中国当局の努力がうかがえるものといえます。ただし、依然として地区により還付状況にばらつきが見られ、また企業単位でみれば依然多額の未還付額を抱えている会社もあります。還付システムの問題点としては、事務手続(書類整理、電子データの入力、送信作業など)にかなりの負担を強いられること、還付計算の問題点としては、一部地域で保税輸入原料高を控除できる条件として核銷単を要求されること、同輸入原料高が税務局による自動計算となっており検証不能であること、などが注目されます。

還付率の引き下げ後、一部の企業(特に江蘇省)で進料加工から来料加工への移行をしていますが、多くの企業(75%)は還付率引き下げによるコストアップを現状、現地法人ベースで吸収しています。本社など関連会社向け輸出において、現地法人がその追加コストを今後とも一方的に負うことは移転価格問題を引き起こす可能性があります。負担を売買双方でどのように合理的に配分するかを早急に検討し、次回以降の価格改定に織り込んでいくようにしましょう。

2. 税関調査

税関による輸入品の価格調査が各地で目立ってきています。ロイヤリティなどライセンス使用費に対して関税を課すという問題、国外関連企業から輸入する原料、製品の価格が安すぎるのではないかとの嫌疑から保証金を取られたり、価格の正当性を証明させられたりという問題について、約4分の1の会社が何らかの税関調査を経験しています。

調査手法的にはまだ税務局ほど確立されていないものの、調査部局の人員を充実させる傾向にあることは確かであり、今のうちに取引価格の正当性を主張する理論武装と根拠資料を用意しておきましょう。

3. 個人所得税の修正申告

日本(または香港)払い給与を含めた合算所得をベースに個人所得税を計算しているとの質問に“ハイ”と回答頂いた割合は4分の3でした。また、修正申告を検討している企業は、8社に1社の割合となりました。個人所得税の修正申告に前向きな企業と、躊躇する企業がほぼ均衡している 状況にあるようです。国税発[2004]27号通達では6月末までの罰金免除をうたっていますが、各地の税務機関の整理作業が本年末までであることを考えれば、期限を過ぎても必要なら年内に自主的に修正申告をすることが税務リスク対策と言えましょう。

当問題は、情報を整理し、状況を複眼的に判断して会社としてのスタンスを決める(腹をくくる)ことに尽きます。

※本文は著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません


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