2004年5月26日

第4回控除できない「非正常損失」~棚卸差損の増値税~


日系企業の製造工程管理は世界最高水準!でも、ちょっと待ってください。中国工場の在庫管理は大丈夫ですか。今回は不要な税金とコストアップを抑えるための、棚卸差損にかかる増値税のお話です。

年末恒例の在庫棚卸作業。点数カウントや集計計算は本社と同じ高水準。

「当社は製造業、在庫管理の重要性は重々承知、倉庫への入出庫処理・現物管理も完璧です。おまけに原材料保管場所は鍵で厳重管理!完全没有問題!」と自負しながらも、なぜか生じる棚卸差異。

この棚卸差異というのは経理部門で把握している帳簿上の在庫数と実在庫数との差ですよね。つまり、いくら在庫の実物管理や棚卸作業がしっかりしていても、経理部門の行う在庫記録や原価計算と連動していなければ意味がありません。

棚卸差損は、在庫調整や原価の再計算が必要なだけに留まらず、増値税を追加納付しなければならない場合があります。次の規定の意味を今一度考えてみましょう。


増値税

増値税の納付税額は「売上増値税-仕入増値税」で計算されますが、年度末の実地棚卸作業の結果生じた棚卸差異が税務局より「非正常損失である」と認識されれば、計上された「仕入増値税」額が控除できない、つまり増値税納付額がその分増えてしまうことになります。例えば、国内仕入材料の帳簿数量(1万個)が実際には9000個しかなく、棚卸差損が10万元発生したとすると、会計上10万元のコストアップになるだけでなく、この棚卸差損が「非正常損失」と見なされれば、棚卸差損にかかる仕入増値税が控除できず、1万7,000元(=10万元×17%)は追加のコストアップとなってしまいます。

進料加工は要注意!

もしこれが、進料加工で輸入した保税原材料で通常歩留を超える棚卸差損だったら、原材料の流出は国内販売とみなされるため、関税、輸入増値税の納付も必要となります。企業所得税を計算する上でも、税務局による承認が得られなければ、損金にすることができません。予想もしなかった追加税金の納付、どうすればいいでしょう?

まずは、この棚卸差損が「正常」なのか「非正常」なのかを吟味する必要があります。しかし、残念ながら現状の税務実務では「正常」「非正常」が明確に定義されているとはいえず、会社と税務局で見解の相違が生じる可能性は否定できません。それだけに、実地棚卸で毎回多額の棚卸差損が生じるのであれば、要因分析は徹底的に行いましょう。意外と在庫管理現場と経理部門との情報伝達の問題かもしれません。同時に会社として差異要因の「正常」「非正常」の区分を明確にする『物差し』を持ちましょう。我が社にとって「非正常損失」とは何を指すのかを、万一税務調査を受けても答えられる状況を準備しましょう。

やはり何らかの数値基準があれば説得力が増すことは確かです。

※本文は著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません


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