2004年5月12日

第3回本社在華有『常設機構』!~PE課税の仕組み~


本社在華有「常設機構」――。こんなことを税務局から言われたが、どうも話がいまいちピンと来ない。ここはひとつ「親しみやすさ」が身上の、日本の会計士さんに聞いてみよう。

「常設機構」というのは、簡単に言えば「みなし事業所」です。英語の頭文字をとって「PE(Permanent Establishment)」ということもあります。

製造会社で問題になるPE課税の話には、日本本社から現地会社に技術者が派遣されて、技術指導料を払う場合があります。中国に工商登記していない会社でも、中国に人を送って6カ月を超える作業をすれば、日本本社があたかも中国に存在しているかのようにみなされます。

税金を実際に払うのは現地会社ですが、これは源泉徴収しているだけで、実際に負担するのは本社です。技術指導は生産が続く限り必要ですから、普通6カ月は超えます。税務局は実態を見ますから、無理やり契約を6カ月単位に細切れにしても、作業が連続しているとみなされたら反論するのは難しいでしょうね。

PEがあるとなったら次はこのPEの収入と課税所得はいくらかが問題になります。簡単に言いますと、現地会社が払う指導料が収入です。課税所得は、技術指導を1つのプロジェクトとみて、プロジェクトの収入と費用を個別に計算しているのなら、その収入から費用を差し引いた残りです。本社間接費の集計が難しいのと、それを中国の税務局に証明するのが難しいのとで、実務上は課税所得を推定されることがほとんどです。

推定課税方式がとられた場合、利益率は10%から30%とみなされることが多いですね。

必要な税金は何かというと、まず営業税と企業所得税があります。よくあるのは指導料の5%(営業税)と、5%先引後の10%、つまり指導料の9.5%(企業所得税)を、現地会社が源泉徴収して払うやり方です。営業税はいいとして、10%の所得税、これ本当ならPEのない外国の会社が「技術使用料」を受け取るときの源泉所得税の計算方式(使用料方式)ですね。つまり人が中国に来ず、書面・図案などで技術を提供しているという前提です。

技術指導員の所得も課税対象

実際には現地に技術指導員が来て仕事していますので、この計算は本来ならおかしいはずです。PEがあると、仮に指導料の30%をみなし利益と認定された場合、所得税率は優遇なしの33%が適用されて、結局収入の9.9%が課税されます。

それでも使用料方式で税金を計算することがあるのは、1つには個人所得税の問題があるからですね。つまりこの方式によることで、人は来ていませんよ、と間接的に言っているわけです。でも、指導料の計算をみれば、1人1日あたり××万円と決まっているのですから、人は来ているはずと分かります。

ここで問題となるのが推定課税方式で、PEの費用総額は推定計算されますので明細は問われないかわりに、中国に来た技術指導員たちの給与もPEが負担したとみなされます。この結果、それぞれの技術指導員の滞在期間を183日未満にしていても、中国のPEが負担したとみなされる給与は課税されます。事実認定の問題とはいえ、個人所得税は見落としがちなので、少なくとも課税されたらいくらになるかシュミレーションしておいた方がいいですね。

営業税も個人所得税も地方税務局の管轄で、PEの認定→個人所得税の徴収、という動きが見られますのでここ要注意です。対策は、実際所得課税で計算できるか、あるいは推定費用のうち給与部分が占める割合を抑える理屈が立つかですが、いずれもプロジェクト計算があって、経費内訳が出せないと話しになりませんので、まずはここから一緒に確認してみましょう。(本稿は税務会計上のポイントを実践形式で解説したものです)

※本文は著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません


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