2003/09/23

第89回 魔術食品工業<モスフードサービス>、「安心感のある」食品の提供で業界をリード



「食を通じて人を幸せにすること」を企業ポリシーとし、ハンバーガー専門店「モスバーガー」を展開するモスフードサービス。その台湾展開を製品供給面でバックアップするのが魔術食品工業だ。

井口貢総経理
1991年に設立された同社は、日本のモスフードサービス社とその関連会社が全株式を持つ、モスグループの傘下企業。台湾の工場拠点は1994年に移ってきた台北県樹林市。その前の3年間は林口に生産工場を構えていた。

樹林工場の敷地面積は1,155平方メートルで、3階建ての工場の延べ床面積は1,870平方メートル、そのうち生産スペースは約900平方メートルとなっている。

工場で働く36人の社員をまとめるのは、唯一の日本人で、2年前に赴任した井口総経理。食品開発、品質管理の部門を担当してきただけあり、食品の「安心感」を強調していたのが印象的だ。

■主力製品の供給源

生産品目は大きく分けて、パティ・チキンナゲット、牛肉/豚肉スライス、ソース・たれ類、スープ類、和風チキン、ライスプレートの6種類となる。

サラダ、デザート、ホットドッグなどを除く、モスバーガーの主力製品が同工場で生産されている。製品はほぼすべて冷凍で出荷され、各店舗で加熱や調理がなされ消費者に提供される。

「工場が手狭」(井口総経理)ということで、生産品目は日によって変わる。取材の日は和風チキン(モスチキン)が次々と加工され、揚げられていた。日本の生産工場より規模は小さいというが、その管理の質は変わらない。重さや形も重視し、規格に合わないものは容赦なくはねられていく。肉は多めで、ボリュームたっぷりだ。

肉のスライス台では、社員が数人のグループになり黙々と作業している。カットするだけの単純作業にも見えるが、次々と焼肉ライスバーガーの原料が加工されていくのは壮観だ。

スープ生産のエリアでは甘い香りと湯気が立ち込める中でミネストローネとクラムチャウダーが作られる。クラムチャウダーの主役のあさりは、1つ1つの商品で数が均等になるよう、ビニールで小分けされる。この細かな作業が安定した製品を形成するのである。

■夢は独立メーカー

肉加工作業現場
井口総経理は台湾人スタッフをまじめと評す。食文化にも左右される業界なだけに、教育や管理が一筋縄でいかないのは当たり前のことだが、同総経理は、「目的を持って教えていけば必ず納得してくれる」と語る。食品加工作業はもちろん、工場で重要なアルコール殺菌から消毒まで、順序立てて    説明していくことが重要だという。

モスバーガーは、現在、台湾で53店舗展開中(9月22日現在)だが、その運営は安心食品服務が行っている。台湾側は東元グループを中心に3分の2、残りの3分の1を日本のモスバーガーが出資して設立した合弁会社だ。この安心食品服務が魔術食品工業の販売先の9割を占めている。今年7月に開設した樹林工業区内の自社物流センターから、毎日、質の高い食品が各店舗に配送されている。

売り上げではライスバーガーが全体の約30%を占める(日本では約5%)。しかし、「味噌味はだめ。テリヤキバーガーは撤退した。塩分も抑え目がいいが、辛いものは好まれる」(井口総経理)との特徴もあり、やはり市場の嗜好やニーズと向き合いながらの製品展開も重要になってくる。

最後に、総経理に将来の夢を伺ったところ、「食品メーカーとしての独立」と教えてくれた。モスバーガーへの製品供給を柱としながらも、その幅を広げ、自社ブランドの展開に思いをはせているのだという。

ブランドを大切にし、安心感があり、健康的なおいしい食品の提供を掲げる同社と総経理にとって、その夢が実現するのもそう遠い日ではないのかもしれない。

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