2003/08/12

第83回 カネパッケージ(無錫)<カネパッケージ>、「1個からお受けします」、包むハイテク



携帯電話にパソコン――こうした繊細な製品を、消費者の手に渡るまでのさまざまな衝撃や震動から守ってくれる頼もしい裏方がパッケージ。梱包する製品に最適な材料、デザイン、機能を持つパッケージを設計から製造まで一貫して手掛けるのがカネパッケージ(無錫)だ。

カネパッケージは7年前、大口顧客である東芝に伴いフィリピン進出した。フィリピンでは日系大手数社を顧客に持ち3カ所に大型工場を設立、順調に事業拡大した。顧客メーカーの中国事業展開に合わせて、中国進出を決めてからの行動は早かった。2001年夏ごろから準備を進め、翌年3月に日系企業が集積し、上海や南京、蘇州へのアクセスがよい無錫にカネパッケージ(無錫)を設立、5月に操業開始した。

■設計・試作から量産まで

経営陣
カネパッケージ(無錫)の事業展開を支えるのが、中国事情に精通した西原宣章副総経理、フィリピンで3年間の海外オペレーション経験をもつ兼平裕誉シニアマネージャー、梱包対象をみてその設計図がぱっと頭に浮かぶという設計開発の勝野旭主任の3人だ。「パッケージの設計から試作、各種評価ができる。この点では中国進出した日系のパッケージメーカーでは、弊社が最先端」と西原副総経理は胸を張る。

同社の製品は大きく分けて、◇発砲ポリプロピレン◇紙器◇紙緩衝材◇パルプモールドの――の4分野。ハードディスクドライブ(HDD)や携帯電話、ノートブック型パソコン、小型精密機器などを対象としたもので、緩衝度など求められる機能的な条件は高い。 高精度の包装材を保障するのが設計開発室。2台のCADは、日本、フィリピンと互換性を持つ。設計図は接続したサンプルカッティングマシーンでサンプルとして起こされ、各種試験機器での試験に入る。ダンボール箱の強度を測る圧縮強度試験機、ダンボールの素材自体の強度を測定する破裂試験機、正確な重量を測るための恒温乾燥機、電子天秤。実際に製品を梱包した状態で落下させ、その衝撃度をみる落下試験機。これにより、緩衝設計、資材の選定、耐衝撃性など包装仕様の精度の高い試験を行うことができる。

商社的な機能を持つ同社は、受注の約6割を協力工場に委託する。ここで慎重な外注メーカーの選定、管理が求められる。口コミや関連業者からの評判で工場を訪問。必要な材料をすぐに購入または輸入できる現金・外貨を持っているか、管理された在庫材料があるか、工場の設備や工程、管理状況などをみて選定する。実際にオーダーを出した場合は、品質管理を派遣し技術指導にあたらせる。製品はさらに自社工場での検査を経て出荷。この2重チェックにより不良品を完璧にはじく。現在、5社の協力工場を持つが、これらの外注管理のノウハウはフィリピン工場での試行錯誤の経験から生み出されたものだ。

■手作業が支える多品種小ロット

強化ダンボール
自社工場は約30人の工員が2交代で勤務する。6~7人で1組を作り、生産から機械のメンテナンスまで責任を持つ。工場内のラインは大きく2つに分かれる。1つは一般的なダンボールラインで、ダンボール板を切るスリッター、表示を印刷する印版ラック、フレキソ印刷する印刷機、ダンボールを切り抜くダイカット、鋲を打つ機械、糊付けする機械が並ぶ。ダイカットは平面の設計図をもとに抜き型を作り、それで1枚1枚ダンボールを型抜きしていくもので、もっとも原始的な方法とされるが、多種多様な製品や小ロット生産に即時に対応できるという優れた点を持つ。

もう1つののラインは、ベニヤ板レベルの強度を持つ強化ダンボールを扱う。強化ダンボールは木材に代わる資材として注目されている。その強度から輸出梱包や木枠、工場の生産ラインで使用する運搬用のケースなど幅広い用途がある。

2つのラインの後方には、複雑に設計されたダンボール製の緩衝材をすばやく正確に組み立てる女性工員の作業場がある。機械と人の力、両方を効率よくバランスよく配置し、多様な製品を製造する。

この生産体制が同社の「1個からでもお受けします」という販売方針を支える。現在、すでに手狭になった工場の移転を検討している。フィリピンで確立した生産ノウハウをべ-スに、中国ならではの機動性を加え、新たな製品分野への広がりを模索している。

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