2003/08/05
第82回 青島茂治電子<茂治>、プラグがつなぐものづくりの輪
人とモノ、モノとモノをつなぎ、コミュニケーションの橋渡しをするプラグ。そのプラグで国内トップシェアを占める茂治は、製品同様小さいながらも技術大国ニッポンを支える会社の一つだ。青島茂治電子は同社が海外に2つ持つ生産拠点の1つで、主に携帯電話用のプラグやゲーム機用のケーブルの加工・生産を行っている。
青島茂治電子は1996年に、マレーシアに次ぐ海外2番目の工場として100%出資で設立された。主にプラグやコネクタ、ケーブルを加工・生産するアセンブリ工場だ。進出理由は価格競争への対応に加えて、主な取引先のミツミ電機が青島に大きな生産拠点を持っており、すぐに製品供給できる体制を作る必要があったことだった。 主力製品の一つが携帯電話のイヤホン用に使われるφ2.5mm4極プラグ。ノキアと共同開発したものをさらにグレードアップした製品で、300万個の月産体制を持つ。 豆粒ほどの7種類の部品を、若い女性の従業員が素早く組み立てていく。立ち仕事で、1ラインで1日当たり1万2,000個は組み立てていくという。同社の川島昜一総経理は「当社は女性が支えている」と言うが、確かに手先の器用さと忍耐力がないとできない仕事だろう。 組み立てられたプラグは成型作業で一応の完成品となる。わずかなすき間に樹脂を流し込む、最も気を使う作業の一つだ。その後電気検査、目による外観検査を経て、梱包される。 このほかゲーム機用のコントローラーケーブルなどを加工している。 ■販売会社も設立へ
ただ青島にはハイアール、ハイセンスなど大手家電メーカーがあり、製造拠点としての将来性は大きい。最近は韓国系、日系を中心に海外企業の進出も急増している。同社の取引先は今のところ日系企業が中心だが、いずれは青島で部品を調達し、地元の中国系企業と取引することも考えられそうだ。実際に中国系企業との取引をにらんで、販売を担当する会社を設立する計画という。 新型肺炎SARSの影響でやや遅れた生産拡大計画もこれから進める。まずは現在約1,000人の従業員を秋に向けて1,500人ほどに増やす予定だ。 ■ソニーのグリーンパートナーに 操業3年目の1998年に早くも品質管理の国際規格ISО9002を取得。昨年は環境管理の国際規格であるISО14001を取得し、さらにソニーが進めているグリーンパートナーの監査に合格した。これは有害物質を使用しないなど、環境保全に配慮した製品作りを行っている取引先を対象としたもので、青島の保税区に進出しているメーカーでは、同社が初めてという。 「中国での生産で、品質への不安はなかったか」との問いに対し、川島総経理は「品質の9割は設計で決まる」と強調する。数多くの特許を持つ技術家集団ならではの言葉だ。 残る10%を担う生産現場で品質を向上させる努力をするわけだが、誰が行ってもできるプログラムがあれば、品質は保つことができるという。もちろん、そのためには従業員との信頼関係を築くことが肝心。「青島には人が信頼できる土壌がある」と語る川島総経理の言葉からは、事業に対する自信のほどがうかがえた。 |