2003/06/03

第73回 台湾松下電器<松下電器>、「アジアの台湾松下」へ飛躍する



台湾松下電器はクーラー、冷蔵庫などの大型家電、АV機器、OA機器、エレクトロニクス部品までをも製造する総合電機メーカーで、売上高265億台湾元(2002年)は外資系エレクトロニクスメーカーとしてはトップクラスだ。

緒林幹彦社長
台湾松下は1962年設立。台湾の日系企業としては老舗に当たる。当時は日本の協力工場という位置づけだったが、現在では製品の開発、設計、製造、販売、アフターサービス、海外への輸出まで、あらゆる分野に業務が広がる従業員2,800人の大メーカーに成長した。世界200社を数える松下電器の海外展開の中でも、日本の松下電器をそのまま小型化した機能と役割を担っているのは同社だけだ。

台湾松下が今日のような形で発展を遂げた背景には、中国という後背地を抱える地理的条件が挙げられる。

同社は1996年に中国・アモイに、マイクロモーターなど製造の100%子会社「厦門建松電器」を設立。これについて 緒林幹彦社長は、「台湾で量産メリットの出ない輸出型商品を中国に持っていく『集中と選別』を進めた結果だ」と語る。アモイへは輸出対象品のエレクトロニクス部品を中心に移管を進め、現在、グローバル戦略商品であるブレンダーなどは同地で生産して100%を欧米に輸出している。 一方、台湾では研究開発(R&D)の効果を反映させる製品の生産に注力している。同社は全社員の20%に当たる560人がR&Dに従事しており、R&Dにかける費用も売上高の約27%と高い。LED表示システム、カーナビゲーションシステムなどは自社開発製品で、最近はデジタルテレビやセット・トップ・ボックスの開発にも力を入れている。

台湾松下にとって、アモイは世界市場進出のための生産拠点という位置づけだ。厦門建松の生産高は、毎年2ケタのペースで伸びており、現在年100億円。2~3年後はさらに2倍以上に伸ばすことを目指している。台湾松下の持つ長年のノウハウと技術力、および管理力によって厦門建松を育成し、やがては厦門建松でもR&Dの成果を反映させた製品を生産させていく方針だ。

台湾松下は、ものづくりにIT(情報技術)をフルに導入している。コンピューターで製品の完成像をシミュレーションし、落下した場合など、あらゆる状況を想定して問題点を探り、設計点を改善する。そうしたデータを汎用化することで、いわば事前の作り込みの水準が上がり、開発リードタイムが短縮されて、新製品をいち早く市場に出すことができるのだ。

緒林社長は、「台湾松下の当面の目標は、「台湾の台湾松下」から『アジアの台湾松下』に脱皮すること」と語る。同社の企業イメージはかって「重い、遅い、高い」というものだった。これを選別と集中によって「軽い、早い、上手」に転換する成長戦略を描き、「値段が安い、商品の種類が多い」などの他メーカーと同質競争から抜け出して2ケタ成長を狙うという。

このための具体的な方法論として、緒林社長は「グローバルに再輸出できる製品を開発、生産する」ことを第1に挙げた。現状ではLED表示システムなどが該当するが、日本とR&Dの情報交換によって、製品の種類を増やしていく。また、中国での調達活動を補完し、中華圏の松下グループをトータルで支援し、東南アジアにある20以上の関係工場に対しても開発支援を行っていく。

■サービス充実に高い評価

台湾でのマーケットシェア1位を維持することも重要な課題だ。ここ数年、日台韓のメーカーの3つ巴現象が起きている。激戦区を勝ち抜く戦略として台湾松下が打ち出したのは、しっかりとしたサービスを提供する戦略だ。昨年10月より、包括的なサービス向上策として、商品のキーパーツに3年間の保証をつけるサービスを開始。また、年中無休24時間体制での商品配送の受け付けを始め、台北市内であれば4時間以内、台湾内であればどこでも1日以内で配送を完了する態勢を整えた。これらの取り組みは、第3社機関に委託して行った調査で、顧客から実に86%の高い満足度を得ている。

「経営体質を筋肉質に変えて、台湾の経済発展に貢献していく。2005年には販売における新製品の割合を20%まで高めたい」と、緒林社長はさらなる飛躍に向けて意欲を語った。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン