2003/05/27

第72回 旧水坑カ(上+下)西欧電子廠<甲府カシオ>、作るのは「世界中の誰もが手軽に楽しめる楽器」



同工場は1997年に操業を開始。電卓や電子手帳の生産のほか、2001年にはキーボードの生産を開始、今年4月からは電子ピアノ「セルヴィアーノ」シリーズの生産を本格的に開始した。カシオは同じく広東省の珠海などにも中国国内向け楽器の生産工場を所有しているが、番禺工場の製品は輸出用がメーン。現在は主に欧州、日本、北米などに輸出しており、うち日本向け製品は約30%を占めている。今後は中国市場も視野に入れていく計画という。

石原工場長とスタッフ
電子ピアノ「セルヴィアーノ」は、もともとマレーシア工場で主に生産されていたもの。今年3月にマレーシアから広州に生産拠点を移転、この5月に中国からの初出荷を果たしたばかり。ピアノといえばなにより大きいというイメージがあるが、同工場の電子ピアノは従来のアップライトピアノよりかなり小型化された、ほぼ完全な電子楽器だ。とはいえ弾いたときの鍵盤のタッチ、また音色ともに従来のグランドピアノと比べても全く遜色のないものとなっている。ピアノの鍵盤の独特のタッチを再現するために、鍵盤には自作の重りを取り付け、音色は従来のグランドピアノからサンプリングしたものを使用。他の音色やメトロノームの組み込み、またカシオ独自の譜面を見なくても演奏が可能な「光る鍵盤」技術の採用など、アコースティックピアノでは不可能な電子ピアノならではの機能も合わせ持っている。

材料はほとんどを現地で成形、調達している。しかし電子ピアノは木材を使った商品だけに、木材の変形、また組みあわせなどには気を使う。同工場の大滝工場部長は「最初は木材の組み合わせのノウハウの伝達に苦労しました」とのこと。また重さが60キログラムあるため、生産ラインの改良などにも気を配ったという。

■音色へのこだわり

生産ライン
生産ラインでは組み立てられた外枠に鍵盤、電子部品が次々と組み込まれ、徐々にピアノの形になっていく。本物のピアノと同じタッチにするため、鍵盤の組み立ての際にはグリスを塗布する場所、またその量までが厳しくコンピューターで管理される。完成したピアノは従業員やコンピューターにより念入りなサウンドチェックがなされた上で出荷される。設置された専用の無音室の中では、黙々と音色のチェックが行われている。同工場には全体で3,500人、電子楽器部門には500人以上の従業員がいるが、チェックを行う従業員は、採用の際の適性検査を通じて選抜され、3カ月以上の音感を鍛える訓練を受けたうえで決定されるという。楽器のかなめとなる音色へのこだわりがかいま見える。

■誰もが楽しめる楽器を

同工場の石原工場長は「どこで誰が使っても楽しめる楽器を、世界に普及させたい」と語る。音楽人口の拡大が進む中国でも、今後は上海の販売拠点などを通じ、自社製品の普及に力を入れていく計画だ。将来的には中国のニーズに合わせた、新たな商品を開発する計画もあるという。

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