2003/05/13

第70回 大連木下食品<木下食品>、大連から届ける日本伝統の味



製造業の中国シフトが進むにつれて、日本独特の食材が中国で作られるケースも増えている。その一つがコンニャク。大連木下食品は、富山県最大の食品メーカーの子会社で、しらたきの小結などを作っている。日本と比べても遜色ない衛生管理された工場で、若い女性たちの素早い手作業により作られていく様は、今の日本の食卓を支える一つの姿である。

工場風景
1人当たりの作業量は1日4,800個だ
が、慣れれば5,000~6,000個は結ぶ。
富山県魚津市にある創業明治16年の老舗のコンニャク製造販売会社、木下食品が大連に進出したのは1992年。最初は中国側との合弁でスタートしたが、不当な要求が多かったため、翌年には単独出資に切り替える。日系企業の多い経済技術開発区に工場を設け、同年8月から操業開始した。

2001年に開発区から車で40分ほどのリゾート地区・金石灘に第2工場が完成、現在はこちらだけで生産を行っている。コンニャクの善し悪しを決める水の質が良く、しかも豊富であること、ボイラーが自由に使えること、地元政府が丁寧に扱ってくれることなどが生産移転の決め手となった。

中国に進出したのは多くの製造業の例に漏れず、コスト低減が大きな理由だった。大連で主に生産しているのは、しらたきの小結。一つ一つ人の手で結ぶ手間のかかる製品だけに、人件費が高騰し、かつ高齢の労働者が多い日本だけで続けていくには限界があった。四川、雲南省では昔からコンニャク芋を栽培しており、原料を現地調達できるメリットもあった。

ただ、中国での生産にも悩みはあった。コンニャク粉は粘度120、水分7%が理想的だが、中国産は決め手となる粘度に問題があり、最初は日本から持ってきた粉を混ぜていたという。衛生観念の違いなどにも悩まされた。  現在は粘度も向上し、100%中国産を使っている。それでも生産前にはまず水につけて粘度をチェックしなければならない。日本では必要ないが、品質が安定しない中国では今でも欠かせない作業だ。

製品はほぼ日本に輸出。国内販売を試みたこともあったが、中国進出企業がしばしば直面する売掛金回収の問題にぶつかり、あきらめた。現在は大連のスーパーだけに卸している。四川、雲南では食べる習慣があるものの素朴な手作りものなので、値段で太刀打ちできない。その他の地域では食品としての知名度が低く、全国展開できる環境ではないという。

■従業員の9割が日本体験

経営陣
大連に来て13年の浜川旭総経理

衛生管理に厳しい食品メーカーの中でも、同社の管理は徹底している。生産現場に入る前のエアシャワーはもちろん、工場への通路にも防虫用の暗室を設け、異物をシャットアウト。次の日に使用する容器はあらかじめ出して殺菌しておき、生産現場では段ボールを広げない、ゴミは専用の廃棄口を通して出す、などの工夫もしている。

従業員の管理でもユニークな試みをしている。目玉は社員旅行で、何と海外にまで出かけている。日本にも毎年研修生として派遣、コンニャク栽培などを学ばせている。130人ほどいる従業員の9割が日本に行ったことがあるという。

■ミネラルウォーター生産も

開業以来、業績は好調で、売上高は毎年20%のペースで増加。昨年は生産が約2,000トン、売上高は2億2,000万円に達した。売上高は今年2億5,000万円、05年には5億円を目指す。

新規事業としてミネラルウォーターも始める。大連工場で使っている水は、名水の宝庫である富山県で「おいしい水」とのお墨付きを貰っており、中国側からもミネラルウォーターとして認定された。上半期中に大連地区で販売開始する予定。さらにはジュース類の生産も検討している。

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