2003/03/18

第64回 上海内野<内野>、 中国だからこそ高付加価値製品



日本では作れない、ローコストでハイクオリティーな作るために中国に来たのです――。広大な敷地に広がる上海内野有限公司の工場で、数百アイテムという実に多種多様なタオルが生み出される。タオルにとってもっとも最適な糸作りからパッケージングまでの一貫した生産体制で、「高付加価値」製品を作り続ける。

工場風景
上海の市街地から車で約1時間、黒がわらで2階建ての典型的な農家の住宅と緑の畑、褐色の水路が織り成す江南の風景の中に、敷地面積7万平方メートル、年間2,400トンのタオル製品を作り出す上海内野の工場が鎮座する。工場の脇には上海市と江蘇省太倉市を隔てる一筋の河。この河が大量の水を使用する工場の生産を支える。

■電気も水も自家製

同社は1993年、いい原綿の産地で、いいタオルをつくろう、と中国進出を決めた。本業は問屋業の同社、中国生産に関して多くの初めてがあった。まずは糸。中国ではいい原綿が採れるが、残念ながらいい糸の現地調達は困難だった。高品質の糸を安定供給という課題をクリアするために、工場に紡績機能を持たせた。

工場で作るのはタオルだけではない。「水、電気、水蒸気も自家製です」と同社の豊田光洋副総経理。安定生産には安定した環境が必須。電気や水を自社でコントロールできる環境を求めて、あえて管理体制の整う開発区には進出しなかった。発電設備、水蒸気を作るボイラー、水処理設備を持つ。工場の側を流れる河から水をくみ上げ、不純物のほか、染色工程に影響を与える塩分、鉄分を取り除き、硬水を軟水に変える。同時に生産過程で出てきた汚水を浄化し、河に返す。

従業員は1,800人。周辺の農家から通ってくる従業員も多く、人の動きは安定している。図書館やカラオケルームなど福利施設を備えるほか、定期的に発行する社内報で、情報の共有化のほかに、優秀な従業員の表彰を通じてやりがい創出を図っている。また、工場内に飲料を入れたビンが散乱するのを防ぐため、内野のネーム入りの特注ビンを支給し、それを置くためのロッカーも据え付けた。

■原綿からタオルへ

日本でのタオル生産は分業だ。糸は糸屋、染色は染色屋と工程ごとに半製品が動き回る。この工場ではその全工程を持つ。糸は運搬車で染色工程へ。織りあがったタオルの縫製工程は隣りの部屋。日本なら間に入る時間とコストを一切省き、短納期を実現した。

原綿は新疆ウイグル自治区で採れる繊維の長い超長綿。この原綿を混打綿機にかけ、綿を均一に混ぜながら大ざっぱにごみを取り除き、幅広い布のような状態(ラップ)にして巻き取る。これを梳綿機でごみや短繊維を梳き取り、一本の太い綱状(スライバー)にする。そのスライバー8本を1本に併せ、それをさらに8本から1本にする練条を経て、粗紡機、精紡機と撚りをかけられ成形され、タオル用の20、30番の糸が姿を現す。

豊田副総経理
糸は染色工程で、染め上げられ、織りに入る。操業当時20台だった織機は1年後に60台に増設。4班3シフトで24時間、織り続ける。タオルはそれから、プリントや刺繍、ネーム付けなど、それぞれに必要な工程を経て完成する。工場の一角には、注文どおりの色を作り出すカラーマッチングシステムやジャガードのデザインをプログラムする、タオル生産の頭脳部分である企画室がある。

豊田副総経理は「中国だから、日本の人件費ではつくることのできない、ハイクオリティーの製品が作れる」という。タオルの一辺に縫い付けられたレース、全体を縁取りする刺繍、複雑なアップリケなど、機械化できない工程を人の手で作り出すことで、多品種・小ロット・短納期に対応する。

同社は現在、タオルのほか、バスマットやベッドリネン、トイレタリーなど関連製品を生産する。「タオルから始まるくつろぎ、潤い、癒しの空間作りをトータルで提供する」をコンセプトに、日本では作れない、高付加価値製品を開発し続けている。

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