2001年11月26日

第53回 日華化学(香港)<日華化学>、界面活性剤で「中国の霸王」へ



「界面活性剤」という薬剤を御存知だろうか。例えば水と油は一つの器に入れると分離してしまうが界面活性剤を入れると白濁して混ざり合う。2つの異なった性質を持つ物質の境界面に働きかけてその性質を変える。これが界面活性剤の働きだ。実は石けんから医薬品、食品に至るまで、生活上のありとあらゆる商品で使われている。日華化学(本社・福井県福井市)は、繊維用の界面活性剤生産でアジアのトップシェアを誇る企業だ。同社は近く、中国市場で大きな転機を迎える。

中尾・香港日華化学社長

名古屋2部に上場する日華化学の歴史は古い。1938年当時、中国の天津にある化学メーカーと取引していた江守商店が、日本でのアミノ酸生産を依託されたのが日華化学の始まりだ。当時の江守清喜社長が「日本と中国の懸け橋になろう」という理念を持っていたのが社名の由来だという。その後、台湾やタイ、インドネシアなどを経て、香港に進出したのは1988年と比較的新しい。

日華化学の主な製品は、繊維加工用の界面活性剤。前述した水と油の作用以外にも、界面活性剤の基本的な性質から生まれる働きとして、「洗う」、「泡を消す」、「染み込ませる」、「溶かす」などがある。これらを組みあわせることによって、次々と新機能を持つ界面活性剤を生み出すことができるというわけだ。界面科学がパフォーマンス・ケミカル(機能性化学)と言われるゆえんがここにある。

界面活性剤サンプル
繊維加工用が50%

同社の具体的な商品としては、衣類用の平滑柔軟剤『NKオイル・シリーズ』や、防炎加工材の『ニッカファイノン・シリーズ』、人工・合成皮革用樹脂の接着剤『エバファノール・シリーズ』などがある。

日華製品の50%は繊維関係で、紡糸、製織分野から、漂白、染色、仕上げまで、繊維製品が関わる全工程の薬剤を手掛けているという。このため繊維加工用の界面活性剤では、日本で23%のシェアを占めトップを誇る。香港日華董事長を務める中尾侑之輔・本社専務兼グレーターアジア担当は「アジア全域で、正確な統計のない中国を除けばトップだろう」と話している。

しかも同社の製品は、脱墨剤や紙力増強剤などの紙パルプ関連、シャンプー・リンスなどのヘアケア製品、先端バイオを駆使したミニトマト生産、精密化学品までに及び、生活面で同社が関係していない商品分野はないと言えるほど広範囲にわたっている。

これら事業は総じて拡大基調にあり、不況で製造業の空洞化が懸念される中、「国内でも人材需要は高く、現在の従業員(約560人)の削減や工場閉鎖の予定は全くありません」(中尾専務)というから頼もしいかぎりだ。

中国市場を統合

同社は現在、「グレーター・チャイナ構想」なる中国市場の拡大計画を進めている。日華はこのほど、合弁相手だった香港企業UTJと広州日華の全面買収に成功した。さらに浙江省杭州市蕭山の経済技術開発区には、地場企業との合弁企業「浙江日華化学」(日華出資比率82%)を立ち上げ、上海には11月21日に商品開発の「日華化学技術資詢諮(上海)」を設立した。

上海では、研究開発や技術サービス、杭州では日本でやってきた化学基礎反応事業から生産、広州では原料調達・生産と、本土3拠点での生産体制ができ上がる構想だ。

グループの年商は今年3月期で294億円。来年はさらに増収を見込む。中尾専務は「中国の関連企業を一つの大きな『日華』としてまとめるのは、創業以来の社のロマン。『中原に鹿を追う』という言葉のように、中国の霸王を目指したい」と意気込んでいる。

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