2001/10/08

第47回 上海平田機械<平田機械>、「生産」のスーパーバイザー



体育館を思わせる天井の高い広々とした工場。緑色の床にはただ白いラインが等間隔に引かれている。この空間が臨機応変に姿を変え、冷蔵庫やエンジン、ブラウン管などを生産するラインを作り出す。

古島龍副総経理
平田機械の中国進出は8年前。代理店経由で製品輸出してきたが、その後ダイレクトに販売するようになった。

ここ数年は日系だけでなく、文字通り世界中のメーカーが中国へ生産シフトを加速している。生産設備の現地調達を求める顧客の声に応え、平田機械も1999年に海外拠点6番目となる上海工場を設立した。

同社の生産範囲は自動車、家電、コンピューター、食品、建築資材など幅広い分野に跨がり、三菱や日立、松下、ダイキン、ホンダなど日本企業をはじめ、ハイアール、永新など中国企業に製品納入した実績を持つ。

スタッフはエンジニア

30人近くいるスタッフのうち、じつに23人が機械設計や電気設計のエンジニア。生産ラインの設計や運用ソフトウエアのプログラミング、製造指導などを担当する。「ワーカーはすべて外注なのです」と、同社の古島龍副総経理。上海には10社余りの「安装公司」があるという。安装とは据え付けのこと。機械や設備の据え付け専門の企業で、社員はすべて図面を読むことができ、これまでにさまざまな仕事をこなしてきている、いわば据え付けのスペシャリスト揃いだ。

稼働状況を確認するエンジニア
受注する生産設備の規模はさまざま。冷蔵庫のラインで総延長距離400メートル、ブラウン管では800メートルに達する。また20~30メートルの搬送ラインもある。その規模によって、必要となるワーカーの人数が異なるのは当然だ。一定数のワーカーを自社で雇用するのは、調整が難しく人件費の無駄を生む恐れがあるうえ、訓練や管理など各種コストが発生する。古島副総経理は「能力が劣っていたり、なまけるなどのワーカーがいれば、所属会社の管理者に一言いえば、指導するなり、交換するなり対応してくれる」という。

同社は3~4社の安装公司を状況に応じて使い分けている。協力関係を重ねていくうちに、ワーカーも同社の要求や技術レベルを理解し、細かい指導がなくてもきっちり仕事をしてくれるようになったという。青島など遠方の顧客先の据え付けの際にも派遣する。安装公司の存在が、同社の生産を支えているのだ。

ラインのプロが生産を設計

生産設備業界では、ブラウン管やコンプレッサーなど製品ごとの競合はいるが、平田は物流や搬送など単純なものから専用機を挟み込んだ複雑なライン、自動システム、ロボットなど高機能のものまで、幅広さで他社を引き離す。多様なラインを手掛けてきた経験を生かし、注文通りにラインを作るだけではなく、設計の中で効率的なシステムを構築し、提案するという生産のスーパーバイザーを自称する。

設計が完成したら、図面に基づいて部品購入、加工が始まる。モーターやシリンダー、CPUなど駆動・電気関係の重要部品は日本から輸入する。揃い次第組み立て、同社工場内での稼働調整、顧客の立ち会い検収と進む。OKがでれば、運送できるサイズのユニットごとに解体し、搬送、客先での据え付けとなる。

中国で生産した設備は、同社の日本製に比べ3分の2から半分の価格になる。「日本の設計・品質レベルで、安く」「生産のトータルアドバイス」を掲げ、台湾やシンガポール、韓国の競合メーカーとの差別化を図り、シェア拡大を目指す。

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