2001/09/03

第43回 ポリマテック(上海)<ポリマテック>、カーオーディオの「振動」をブロック



カーオーディオに欠かせない防振部品のひとつであるダンパー。その部品で世界シェア7割を誇るポリマテックが、上海に旗艦生産基地を立ち上げた。同社のアセアンでの豊富な生産経験をベースに、好調な中国経済を追い風とし、トライアル生産から出荷まで4カ月と、記録的なスピードでものづくりを進めている。

ポリマテック


シン(クサカンムリに辛)庄工業区のはずれに、昨年末に完工したポリマテック(上海)の新しい工場が立つ。5万5,000平方メートルという敷地に、工場が1棟。青々とした芝生に覆われた更地にはあと3棟が建設される予定だ。

「工場立ち上げ前に、オーダーをもらったのは上海が初めてですよ」と、笹田詔夫総経理。顧客をはじめ、世界の企業進出が加速する中国から生まれる需要に支えられて、着々と事業が展開されている。これまでにマレーシア、インドネシアと工場を立ち上げてきた笹田総経理は、携帯電話のようなモデルチェンジの頻繁な垂直立ち上げの市場にとって、合理的にいかない中国の通関システムは全くマッチしておらず、中国製品の競争力にとってのボトルネックだ、とまだ慣れない「中国式」に手を焼く一方、上海の人材は優秀と語る。

トップシェアを支える品質

主力製品である車載用CD・DVDの防振ゴム、ハイブリッドダンパ(HBD)は、3月にトライアル生産、5月に量産、7月出荷と進み、現在月産30万個。来月からは3交代制勤務になり、約75万個に引き上がる。HBDはプラスチックとサーモプラスチックエラストマ(TPE)でできた本体の中にグリスを注入し、プラスチックのふたをしたもの。TPE部分の弾性とグリスの微妙な粘性が生む柔らかさが、走行車両の多様な振動に適応し、オーディオの安定した再生を実現する。

世界シェア7割保持の理由について、真下高一郎副総経理は「開発部門の設計力」が高いためという。どんな振動にも対応するHBDを設計できるという同社の設計力を支えるのが、グローバルスタンダードの品質を安定生産する生産力だ。

機械化された工場では、工員のほとんどが検査員。1種類の射出成形機からはふた、もう1種類の2色成形機からはプラスチックの枠とTPEの弾性部が接合した状態のケースが次々と吐きだされる。そのケース部は成形機の隣りに一列に並ぶ検査ラインに運ばれる。工員が目視で異物混入やひび、キズなどの不具合品をはじいていく。

第1検査が済んだケースは次の工程、グリス注入・ふた接着のラインに届けられる。ここは機械の出番だ。グリスを注入し、ふたを接着するという作業が、微妙なタイミングで行われる。自動化ではあるが技術者は片時も離れず、機械の動きをじっと見つめ必要な調整を加える。こうしてでき上がったHBDが最終検査のラインへ。外観検査を終えた製品は、パッキングされ、さらに出荷検査へと向かう。

工場

立ち作業の緊張感

ごみひとつないこの生産現場には、工員の椅子がない。同社は2000年に全社的に立ち作業による生産方式を導入した。スペース省略や流動的な動作ラインの確保など、工程全体のレイアウトがスムースになるという。2~3時間に1回の休憩を効果的に入れ、緊張感を持続させる。立ち作業が現場の整然とした印象を与えている。

同社では現在、量産を開始したHBD、携帯電話の入力スイッチ、CD用のローディングローラーの3製品の生産が決まっている。入力スイッチは現在トライアル生産の段階で、ローラーは来年1月の量産開始を予定。月産規模は1期計画で、HBDが300万個、入力スイッチが150万個、ローラーが200万個を目指す。

部材の内製化を基本とする同社は、金型の自社生産も検討中だ。合計4棟の工場建設計画が完成したときには、工員2,000~3,000人の大型工場となる。「市場動向をみながらということになるが、完成の時期は予想以上に早い可能性が大きい」という笹田総経理の見通しのように、3年後には旗艦工場としての姿があるかもしれない。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン