2001/08/27

第42回 天津雅瑪屋食品<やまう>、中国の大地から日本の伝統の味を



きゅうり醤油漬、だいこん醤油漬けに、福神漬けや紅生姜。漬物大手のやまう(東京都目黒区)の合弁会社である天津雅瑪屋食品は、中国で唯一、日本の漬物を作り、現地で販売している。華北平原の北端、野菜畑が広がる天津郊外の工場、その中を漂う匂いは間違いなく日本のものだ。そのおいしさは、朱鎔基首相のお墨付きも得ているという。

天津雅瑪屋食品は1997年、やまうの80%出資で天津市薊県に設立された。現在、日本輸出用と中国販売用の漬物を50%ずつの比率で生産している。

薊県を選んだ理由は、原料となるダイコンやキュウリの大産地で、以前から一次加工を委託していたこと、北京、天津の大市場に近いこと、そして水資源が豊かなことだった。

漬物作りには大量の水を使う。水不足に悩む中国北部だが、同県はネスレがミネラルウォーターの工場を構えるほど良質の水を産出しており、漬物を作るにはうってつけだった。

■契約農家で野菜調達

脱塩前の漬物

漬物作りは良質の野菜を育てることから始まる。野菜はザーサイなどを除くと、基本的に地元の契約農家から調達している。最近の残留農薬騒動で浮き彫りになったように、中国産野菜は日本の規格にそぐわないものが少なくない。天津雅瑪屋の契約農家は日本の厳しい要求に合わせて野菜を作っている。

こうしてできた野菜はまず下漬けに回る。旬の野菜を使うため、きゅうりは6月15日から7月15日、ダイコンは10月5日から10月15日の間に一気に下漬けする。朝のうちに収穫し、良いものを選別した上で下漬け工場に持ってゆき、その日のうちに漬け込むのだ。その後、積み替えや大小の選り分けなど行い、90日で漬け込みが終ると一次加工の工場へ。ここではへたを取ったり、異物を除去し、カットする。この時点で日本に輸出されるものもある。

カットされた製品は天津雅瑪屋に運び込まれ、まず良質の水を使って脱塩。続いて圧搾し、水を除く。そして調味液を入れてかく拌し、成分チェックをした後、冷蔵庫で熟成。こうしてできた漬物を、女性従業員が慣れた手つきで計量、袋詰めしていく。その後も金属チェック、熱湯殺菌、目視による検品を経てようやく箱詰め、出荷となる。

■目標は100%中国で販売

集合

中国で現在販売しているのは27種類。最初は日本風の漬物を中国人の口に合うように一部改良し、日本の技術で製造した製品を作って売り出し、消費者の反応を見ていたが、感触が良いとは言えなかった。中国の漬物は見た目が悪い上に塩分を大量に含み、しかも決して衛生的とは言えない工場で作っている。その代わり驚くほど安い。これに対し、天津雅瑪屋食品の製品は色良し、香り良し、歯切れよしで低塩だが、値段はやや高い。最初は試行錯誤の繰り返しだったという。

味付けを開発するのは、日本人1人と中国人2人の研究員。ベースはあくまでも日本の漬物だが、そこは中国、やはり濃いめの味や五香粉などのスパイスが効いた味が好まれるそうだ。

違いを認識するようになった消費者に支えられ、売り上げは毎年倍以上伸びていった。あの朱鎔基首相も大好きで、外遊には必ず持っていくという。

現在は地元天津や北京を中心に、華北・東北・西北で販売しているほか、大市場である華東、華南の開拓を進めている。ばら売りをするアンテナショップを北京に設けたり、贈答用のセットなどを扱う専売店をオープンするなど新しい試みもスタート。将来は製品のすべてを中国で販売するのが目標だ。


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