2001/08/20

第41回 C&C新薬研究所<中外製薬>、世界医療に貢献する新薬の創出へ



完成までに少なくとも10年以上はかかるという新薬研究。日韓の製薬会社が共同で設立したC&C新薬研究所でも、この長期戦の「ものづくり」に向け、日々、地道な努力が続けられている。内分泌系に特化した研究で、国際的に通用する新薬開発を目指して。

日本の中外製薬と韓国のチュンウェ(ChoongWae)製薬が共同で設立したC&C新薬研究所(京畿道華城市)は、今年で11年目を迎える新しい研究所。だが、日韓両社の関係は古く、30年以上前までさかのぼるという。

1971年、チュンウェ製薬が中外製薬の医薬品を韓国で販売して以来、チュンウェ製薬が中外製薬の製品を多く販売している。それによって、両社の関係は次第に強固なものとなっていった。マーケティング面での協力関係が構築されて数十年の歳月が過ぎた。

では、もっとこの協力関係を発展させることはできないか――。チュンウェ製薬が以前から考えていた「新薬研究での協力」で両社の意見が一致。1992年1月、C&C新薬研究所が設立された。資本金10億ウォン(年間研究費4億ウォン)は両社が折半で出資し、すでに新薬研究の経験がある中外製薬からは経験とノウハウが、チュンウェ製薬からは設備と研究員がそれぞれ出し合われることになった。

キム・ハクヨプ所長

同研究所のキム・ハクヨプ所長は、「違う国が、資金などすべてのものを50対50で出し合い研究所を設立するのは世界でも例がありません。これからもないんじゃないかと思いますよ」と話す。日韓の信頼関係が、世界でも貴重な“子供”を誕生させたわけだ。

設立当時は13人にすぎなかった研究員数も、現在は50人に増え、年間研究費も50億ウォンに拡大している。

チュンウェ製薬は1945年設立。2001年の売上高は3200億ウォンで、製薬業界3位にランクされている。

■内分泌系領域に強み

研究室内

新薬研究にはいくつかの段階がある。まずは、新しい薬のアイデアを考え、それが研究プロジェクトとしてスタートできるかを確認する「探索研究」。次に、動物実験などにより開発候補化合物を創出する「創薬研究」。これらの基礎研究が済んで初めて、その薬が人間にも効果があるのかを研究する臨床実験の段階に進むことになる。

同研究所はこれまで、循環器系領域と内分泌系領域に関する創薬研究を行ってきた。この10年間で、循環器系領域では「抗不整脈剤」、内分泌系領域では「乳がん治療剤」と「IBS(過敏性腸症候群治療剤)」の合計3つの開発候補化合物を創出する成果を上げている。

今後は、この10年間で蓄積された内分泌系領域での創薬研究や改良型新薬の開発に取り組む考えだ。

改良型新薬というと「少し変えただけ」というイメージがあるが、けっしてそうではない、とキム所長は言う。どんな薬も完ぺきではない。副作用があったり人によって効果が異なったりと、改良点はいくらでもある。パーフェクトに近いものができれば、それは立派な新薬になる。

■21世紀ビジョンを確立

C&Cはこのほど、今後10年の方針をまとめた21世紀ビジョンを確定した。それによると、▼内分泌系領域における探索・創薬研究への集中化▼薬物動態改良のためのテクノロジー・プラットホームの整備・強化▼研究ネットワークの構築▼企業文化・制度の改革――などが主要目標となっている。

「これからの10年で、自分たちが独自に生き残るためのシステムを確立していかなければなりません」

キム所長の言葉通り、C&C新薬研究所の挑戦は、まだ始まったばかりなのかもしれない。


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