2001/07/16

第36回 韓国粉末冶金<日立粉末冶金(技術提携)>、確かな技術、さらなる飛躍を



プレス機の動作に合わせて、一定のスピードで精密な形の部品が姿を表す。焼結、スチーム処理などを施した完成品が次々と並べられていく過程には、派手ではないものの機械産業の発展を支えてきた確かな技術が詰め込まれているようだ。

粉末冶金は鉄、銅、ステンレスなどの金属粉を配合し、金型に入れ圧縮、成形したものを高温加熱することにより、熔解、鋳造工程を経ずに合金化する技術。機械加工をしなくても精度の高い製品を効率良く、大量生産できることが特長だ。粉末冶金部品は、自動車のエンジン、ミッションなど機械の心臓部に多く用いられている。

自動車1台当たりに使用される粉末冶金部品の量は平均して米国で17キログラム以上といい、日本は7.3キロ、韓国でも使用量は増えている。

コストダウンのかなめとなる粉末冶金部品は、自動車のほかにも、家電製品、オーディオ機器、パソコンやデジタル機器などに用いられており、成形技術の向上とともに、今後も用途は拡大すると予想されている。

韓国粉末冶金株式会社(KPM・仁川市)は1967年の設立以後、国内では業界トップクラスを長く維持してきた。従業員数は現在185人。約500品目を扱い、自動車関連部品が約80%を占める。

韓国自動車メーカー5社のうち、双竜自動車を除く4社に製品を供給。起亜自動車向けが58%と最も多く、現代自動車を合わせると、現代系列が7割を超える。また、ルノー・サムスン自動車の粉末冶金部品は、100%同社製という。

このほか、家電製品用部品の一部を日本へ輸出している。

■中国より常に一歩先へ

KPMは88年から日立粉末冶金株式会社と技術提携を結んでいる。鴇田高志さんは、日立粉末冶金で36年間勤務後、96年から同社の技術顧問を務め、技術改善に取り組んできた。

粉末冶金製造では、ミクロン単位の管理が必要となる軸受をはじめ、精密な部品を数多く扱う。成形時の密度管理や炉の条件を一定に保つなど、工程全般にわたりきめ細かい品質管理が必要となる。

中国よりも技術的なレベルは高く、中型以上の部品では日本よりもコストが安い、そして日本と地理的に近いメリットを生かし、競争力の高い企業にする。そのために、不良品率の低下など品質改善のほか、コストダウンの意識向上を強調してきたが、「まだ改善できる。私がやるべきことがまだまだたくさんありますよ」と鴇田顧問は言う。

粉末冶金部品の調達先として、韓国の評価は高く、いまが勝負どころ。品質の向上、コストダウンを徹底して進めるために、新ラインを組む準備にも取りかかっている。

日本の粉末冶金産業の最前線に立ってきた。そんな鴇田顧問は、現状にとどまらず、次から次へと改善すべき課題を挙げる。

「中国がひたひたと後を追いかけてくる。2年ほどで国際競争力をつけたい、不可能ではないと思います」。一歩でも理想の生産態勢に近づけたい、そんな姿勢が見て取れた。


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