2001/06/25

第33回 青島扶桑精製加工<扶桑化学工業>、クエン酸日本一、中国から食をサポート



人間の体に欠かせないクエン酸やリンゴ酸などの果実酸。その果実酸で世界的に知られる企業がある。大阪に本社を置く扶桑化学工業だ。クエン酸で日本一、リンゴ酸では世界のシェアの半分を占める。青島扶桑精製加工は、同社が中国に持つ海外唯一の拠点。1997年の操業以来、驚異的なペースで業績を伸ばし、生産品目も当初の精製クエン酸から50品目に増加。取引先は日本向けが中心だが、将来は中国向けも拡大、同時に食品添加物の総合メーカーになることを目指す。

青島扶桑精製加工は94年、扶桑化学工業の100%出資で設立された。山東省を選んだのは、クエン酸を生産する業者が多く、これまでも取引があったことが大きな理由。地理的に日本から近いこと、青島ビールが生まれたことからも分かるように精製に重要な良質の水が手に入ることも決め手となった。

97年に操業を開始、現在精製クエン酸の年産は1万トン以上となり、生産品目は当初の精製クエン酸からリンゴ酸ソルト、イタコン酸、グリシン、食用塩など50品目に増えた。業務内容も拡大し、各種粉体・液体のブレンド加工を行ったり、専用の微生物検査室を利用して食品加工会社から成分分析測定や生菌数の測定などを請け負っている。


主要業務であるクエン酸の精製とは、一言でいえばクエン酸の最後の仕上げを行うこと。タピオカやサツマイモを主原料に生産された結晶物質であるクエン酸を一度液体化し、異物を取り除くとともに、水で精製を繰り返すことで「アク」などの不純物を除去。不純物を取り除くことで、甘味料や香料となじみが良く、天然果汁への添加でもほとんど違和感がないさわやかな酸味が得られる。

「小さな分野でも金メダル」をモットーにする扶桑化学工業は、多くのオリジナリティあふれる製品を生み出している。青島扶桑精製加工も97年に中国で初めて、アルコール製剤「檸檬露」の生産を認可された。品質保持や除菌に使われるアルコール製剤は、日本では幅広く使われているが、中国ではまだなじみが薄い。現在の生産規模はまだ小さいが、近年は中国人の食品衛生に対する考え方も変わっており、今後需要が拡大すると見込んでいる。

■中国向け販売を強化

業績は好調で、操業翌年の98年に早くも単年度利益を計上、99年には累損を一掃した。現在の売上高は1億6,000万元、利益は1,500万元に上っている。また昨年夏には2期計画が完了、物流と新たな生産の拠点となる2階建の建物ができ上がった。


同社はこうした勢いをテコにさらに事業を拡大、各種調味料も取り扱う食品添加物の総合メーカーを目指そうとしている。自社の工場拡大とともに現在進めているのが、協力工場を増やすこと。現在は技術者が出向いて指導しているが、いずれは協力工場に完全にまかすことも考えられるという。

出荷先は今のところ日本や現地の日系企業が中心だが、今後は地場系企業との取引も増やし、日中の比率を50:50ぐらいにまでもっていきたい考え。このため大市場を抱える上海、広州に拠点を置くことも検討している。

■社会活動にも力

同社が業務以外に力を入れているのが、地元での社会活動。「教育重視」を掲げる本社の精神に則り、家計が苦しい家庭の大学生に対し、3年前から毎年30万元ずつ奨学金を提供している。付近の村の小学校には理科の実験室を作ったりピアノを寄贈するなど、地域社会との結びつきも強い。


NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン