2001/04/30

第26回 韓国・江南化成<大日本インキ>、「ものづくりの素」、付加価値で勝負



合成樹脂は、形を変え、他の材料と混じり合い、木材や金属など天然素材にはない性能や機能を持つ材料を作り出す「ものづくりの素」。重工業から軽工業まで、あらゆる場面に入り込んでいる現代生活には欠かせない素材だ。

京畿道安山市に工場・研究所を構える江南化成は、大日本インキと韓国の建設用・工業用塗料大手、建設化学工業の50対50の合弁により1971年に設立された。同社の合成樹脂の生産規模は年産10万5,500トン。従業員は286人。

生産するのは大きく、フェノール樹脂とポリウレタン樹脂の2種類に分けられる。フェノール樹脂生産では30年、ウレタン樹脂でも25年以上の歴史がある。

フェノール樹脂は熱を加えると硬くなり、耐熱性、耐薬品性に優れる熱硬化性質を持つ樹脂で、成形材料、鋳物、摩擦材、接着剤、研磨材、塗料・インク、電子材料などに用いられる。一方、ポリウレタン樹脂は過熱すると変形し加工がしやすくなる熱可塑性質を持ち、防水材、合成皮革、一般床材、競技場用の弾性舗装材、靴底などに用いられる。

簡単に挙げただけでもその種類の多さが分かるが、幅広い用途に用いられるため、耐久性、防水性、耐熱性など求められる材質は様々。各品番ごとにユーザーのニーズに合わせて開発・生産されており、究極の少量多品種生産とも言える。

液状、粉末、粒などの形状で出荷されるが、同社では、約670品目を扱っているという。

江南化成の合成樹脂工場

工場内には巨大な「釜」が並ぶ。合成樹脂の生産は、求められる材質にするための成分の配合、温度の管理が重要になる。生産現場では次々と記録用紙に書き出されるデータを読み、24時間態勢でチェックする。

研究開発部門をのぞくと、「フラスコ」と化学記号の世界が待っていた。江南化成では現在48人のスタッフが、製品開発に取り組んでいる。研究室で配合した成分表を元に、20トン以上の容量がある巨大な釜で生産へ。

現在はコンピューターによる管理ができるようになったが、かつては蒸気を入れるバルブの微妙な開け閉めなど、職人技も生きていたという。

また、ユーザー側での加工後の品質を調べるための応用試験も行っている。ニーズをくみ取り、品質を保つことが競争力の向上につながる。和田正副社長は「いかに付加価値の高い製品を提供することができるかが、一番求められること」と強調している。

■五輪の実績、北京でも

江南化成は、競技場トラックやテニスコートの表面などに用いられる床材・舗装材のほか、防水材など土建分野では国内トップの実績がある。

ただ質の高い製品をユーザーに供給するだけではなく、生産はもちろん、施工までを一貫管理して行えるのが同社の強みだ。

和田副社長、文専務理事

競技場用トラックでは、1988年ソウル五輪のオリンピックスタジアム(ソウル・蚕室)のトラックを手がけた。技術・研究部門を統括する文キョン(王に景)明専務理事によると、トラックの評価は選手次第。「決まってほっとした」と当時を振り返る。

2001年6月には、世界陸上競技連盟(IAAF)の品質認証を、韓国で最初に取得した。ソウル五輪での実績と国際標準の品質を武器に、08年北京五輪でも名乗りを挙げる構えだ。

和田副社長は「品質は問題ない。競争が厳しい中で、当社が得意な分野で入り込んでいきたい」と意気込みを語ってくれた。

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