2001/04/09

第23回 汕頭がまかつ<がまかつ>、本場の太公望たちへ、日本の技術を送る



■まだまだスポーツフィッシングの環境は整っていないものの、史書や故事からもみてとれるように、中国には長い歴史を誇る釣り市場が存在する。そのマーケットで地元企業を抑えてトップを走るのが、広東省・汕頭(スワトー)を拠点に製造・販売を行う「がまかつ」だ

株式会社がまかつ(本社・兵庫県西脇市)が汕頭がまかつ(体育用品)有限公司を設立したのは1989年8月のこと。それ以前にも上海で委託加工を行っていたが、中国市場での販売を視野に入れて独資法人として再スタートした。

従業員数は約600人、工場面積は7,000平方メートル。原材料は全て日本からの輸入で、釣り針を選別して袋詰めにしただけのものから、カラフルな糸や羽毛を使う毛針など幅広い釣り針・仕掛け製品を作っている。

■常時1,000品目を生産

サビキや吸い込み、毛針のセットといった仕掛け製品は、常時1,000種以上が従業員の手作業によって生産される。

月産規模は袋単位で100万弱。3分の1は定番製品だが、残りは短いサイクルで新製品が入れ替わり立ち替わりする。

それでも、「汕頭工場で作った製品の不良率は、他地域より低い」(汕頭がまかつ・下井良次総経理)。これは徹底した不良品管理システムの効果だという。

汕頭工場では、材料の分類・収集と仕掛けに糸を付ける作業を行う「結び組」と、仕掛けを袋詰めにして販売製品として仕上げる「包装組」に分れて作業を行っている。そのどちらにも厳しい検査工程を設けており、不良品があった場合には従業員にペナルティを科している。ちなみにペナルティは製造担当より検査担当職員の方が重いそうだ。

■20~30%を内販

汕頭工場で生産した製品のうち、20~30%を中国内で販売している。北京や上海といった大都市、また長江デルタ地域が市場の中心だが、代理店は北はハルビンから西はウルムチと全国に散らばっている。

販売は全て代理店を通じて行われているが、雑誌への広告などは汕頭法人が指揮をとる。発行部数30万部を誇る中国最大の釣り雑誌『中国釣魚』の裏表紙広告スペースはがまかつの指定席だ。

また代理店に協賛する形で釣り大会などのイベントを行っており、スポーツフィッシング人口の拡大にも力を入れている。

都市部住民の収入増などにより、今後さらなる拡大が期待できる中国のスポーツフィッシング市場。北米や欧州、台湾、韓国といった国・地域のメーカーも中国マーケットに触手を伸ばしているが、がまかつは日本で培った技術力を武器に一層のシェア拡大を目指す構えだ。

ところで、釣具メーカーだけあってがまかつには釣り好きの社員が多い。汕頭の釣り環境について聞いてみたが、「海は近いが汚れていてだめ」との返事。福建省まで行けば海水もきれいになるのだが、結局チャーターする釣り船が無いのが現状という。

がまかつ社員にとって、中国のスポーツフィッシング環境の整備は公私両面で重要な意味を持っているのかも。

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