2001/04/02

第22回 上海華鐘レナウンニット<レナウン・カネボウ繊維>、紡績から縫製まで一貫生産



つたの這った古い赤レンガ造りの建物を通り過ぎると工場へつづく回廊が伸びる。租界時代に日本企業が設立した紡績工場が、長い時を経て再び日本の最先端のものづくり技術の下、最新モードのニット製品を生み出す場所に生まれ変わった。

上海華鐘レナウンニットは1994年、中国初の綿ニットの紡績・編立・染色加工・縫製の一貫生産体制を持つ企業として設立された。現在の資本構成は国営企業の上海第十九綿紡廠(出資比率43%)、レナウン(25%)、カネボウ繊維(25%)、住友商事(7%)。上海第十九綿紡廠はカネボウの前身である鐘淵紡績が1921年に設立した公大一廠が、新中国成立後に国営企業に接収されたものだ。

糸から製品までの一貫生産は、各工程の品質管理を徹底できるため、高品質で安定した製品作りができるというメリットがある。同社の販売製品の内訳は、生地が85%で、糸が5%、ニット製品が10%となっている。

高品質をつくるひと手間

最も重要な原材料である原綿は新疆ウイグル自治区で生産される綿の中でも高品質とされる兵団綿(農一師団製)を使用している。97年から特定の綿農家を指定して買い付けできるようになり、よい原綿を仕入れやすくなった。同社は毎年8月下旬から9月上旬にかけて、買い付けのために新疆に足を運ぶ。「50数度の白酒を飲むのも仕事」と、塚越利之福総経理は苦笑いする。新疆綿は一つ一つ丁寧に手摘みしたもので、機械摘みに比べて質がいい。だが、人間の作業の欠点が異繊維混入だ。

原綿の中に混じった他の繊維や髪の毛などが、紡績工程で細かく均一に繊維中に広がると白い生地の中にこれらの異物が点在することになる。そこで紡績する前に一度、原綿をばらし人間の手で異物を取り除く工程を取り入れた。この工程が後に大きな品質の差を生む。

一般的に中国で幅広く使用される糸は太番、中番とという太さ。同社はこれらの単糸や双糸、CSY糸を生産するほか、高級品である細番も扱う。紡績の生産能力は2,000トン。細かい綿毛がふわふわと舞い踊り鼻をくすぐる作業場で、1万6,000の錘が回り、さまざまな撚りの糸を作り出す。

こうして出来上がった糸が編立工程に渡される。ここでは身生地を編む天竺編機、裏毛編機、両面編機、フライス編機と衿や袖口を編む横編機の各種丸編機が生地を編み上げる。風綿といって、風で別の編機から違う色の繊維が舞い込み生地に織り込まれないよう、編機は一台ずつ天井から床まで垂れ下がったビニールカーテンで仕切られている。さらに編機自体に小型扇風機が設置され、他の繊維を近づけまいと忙しく回り続けている。

編立は不具合を手直しできないため、初期検査が肝心。2~3メートル編んだところで検品する。編み上がったら1反40メートルの生地を仮縫いで160~300メートルにつなぎ合わせ、染色加工へまわす。

特殊加工で付加価値アップ

天然素材の染色は「水商売」といわれるほどに、水を大量使用するうえに水質が命。残念ながら中国の水質は、染色の基準を大きく外れている。そのため同社は、硬水を軟水に変え、不純物を取り除く処理設備を装備。一日当たり生地5~6トンの染色に対し、6,000トンを処理し使用している。

染色だけでなく、特殊仕上げができるのがセールスポイント。ノーホルマリンの樹脂加工による形態安定や吸汗速乾加工、保湿性抗菌効果加工(シルクプロテイン、スクワランにより皮膚に潤いを与え、皮膚の清浄作用する成分を加え抗菌性を付与したもの)、涼感加工、ネオソフト(シルクのようなドレープのある風合いで、繰り返し洗濯してもその加工を記憶している)など、日本で話題になっている特殊加工は一通り手掛ける。現在は総合ビタミン加工を

「生き残るために何をするか。価格以外の差別化に特殊加工がある」と塚越福総経理。特殊加工はその技術だけでなく、それに影響をうけない染色技術が必要となる。塚越副総経理は「日本市場向けの付加価値加工を中国で、もっとも手広くやっているのは自社」と述べ、「それに対応する染色技術を持っている」と自負する。

これまで綿一本でやってきたが、麻やウールなどの材料も取り入れるなど、ニット製品事業の拡大を図っている。

不良品の7割は生地に原因がある、といわれるニット製品だが、一貫生産により品質の安定を実現した。手摘みの綿をさらに手でより分けるという人手のいる地味な作業から最先端の特殊化工技術まで、中国でのものづくりの利点と日本の最新技術を取り入れ、厳しい時代に生き残りをかける。

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン