2004年12月14日

第146回 仏山神威熱交換器<神威産業>、「熱交換」技術のパイオニア



仏山市に進出して10年以上。日本の神威産業の子会社として、今や機械に欠かせない存在となった熱交換器の製造を続けているのが「仏山神威熱交換器有限公司」だ。工場内での一貫生産による製品の質には定評があり、中国でもジャンルを越えた幅広い分野で使用されている。

同社が、国営企業(当時)の仏山液圧件廠との合弁で仏山市に進出したのは1993年。日本の大手輸出先だった香港の企業が、生産拠点を広東省にシフトし始めたことを受けての進出だった。生産をスタートしたのは94年だが、当初は工場の立地による関係から、まだ本格的な製品供給は行えない体制だったため「当初の2年半は人材教育に費やした」(石川晴也総経理)という。本格的な製品供給を開始したのは96年からだが、97年には黒字転換を果たしている。

熱交換器とは

作業
熱交換器とは、温度の異なる空気や水、油などの流体を冷却および過熱を目的に間接的に接触させ、熱の交換を行う装置。流体を冷却、過熱、蒸発させることが可能だ。同社が現在メーンに生産しているのは、円筒と管の中に流体を通し熱交換を行う、シェルアンドチューブタイプの熱交換器。油圧回路や油圧機器の、油の温度上昇を防ぐオイルクーラーとしても利用されており、射出成形圧延機、工作機械、船舶、ダイカスト機械、石化プラント、発電設備など使用先は非常に幅広い。

もちろん用途別に製品のタイプは異なる。石川総経理は「表面には出ませんが、機械設備のカギを握る製品。熱交換器は人間にたとえれば心臓に当たると言ってもいい重要な部分」と語る。

経営陣
同社の製品は全て外注なしの一貫生産。高質アルミなど昨今の電力不足で入手が難しくなっている一部の原材料を除き、銅やキュプロニッケル、カーボンスチールなどのほとんどを現地で調達、冷却管や胴体、管板、フランジ、ガスケットなどのパーツに加工した後で組み立てられる。いわば鉄のかたまりを一から製造するわけで、作業がスムーズに進むかどうかはほとんどが作業員のスキルにかかってくるわけだが、石川総経理は「溶接も、機械加工も的確かつ素早い。操業から約10年、作業員のスキルは非常に高いレベルに達していると思います」と述べる。

現在の月産台数は各タイプあわせて3,600台前後。納入先は香港、台湾系機械メーカーのほか中国に進出している米、日本などの外資系機械メーカーがメーンとなっている。操業開始当初は本土系の納入先に代金を踏み倒されるなど、不測の事態も何度かあったというが「顧客の信用審査を行うようになってからは、さすがになくなりました」と石川総経理。

現在の広東における市場シェアは約60%。コンプレッサーへの熱交換器搭載についてはほぼシェア100%を占めており、模倣品や同業他社の製品も多く出回るなか、非常に高い占有率をキープしているといえる。

■新分野への挑戦

現在は更なる業務拡大を目指して、仏山市の国家高新技術開発区に新工場を建設中。すでに技術者は確保済みで、今月中にも設備の納入を終了し、来年の2月にも稼働を開始、3月には製品の出荷を開始する計画だ。新工場では新たに空冷式ラジエーターの生産なども手がけていく予定。

「将来は新工場を中心に、新たな分野の製品をさらに多く製造、市場に乗せていければ」と石川総経理。今や設備のあるところに熱交換器あり。進出から10年以上、中国での需要は止まらず伸び続けている。同社の挑戦はまだ続きそうだ。【広州・菅原湖】

NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン