2004年11月16日

第142回 愛知電子(中山)<シンクレイヤ>、日本のCATVサービスを支える立役者



専門チャンネルの多さなどから注目を集めているケーブルテレビ(CATV)。通常のテレビ放送のほか、近年はインターネット回線としての利用も急増、日本でもすっかり定着した感がある。そのCATVシステム機器を専門に製造、日本のケーブルテレビ普及を支えているのが、広東省中山市に拠点を置く愛知電子(中山)有限公司だ。

生産ライン
日本で唯一のCATVシステム機器専門メーカー・シンクレイヤの100%子会社として、同社が設立されたのは1994年9月。シンクレイヤにとっては初の海外生産拠点となる。現在メーンに生産しているのは、同種機器の中でも特に必要数の多い、CATVケーブルの途中に設置し信号を増幅するトランクアンプ、ケーブルに外部の過電流が流れ込むのを防ぐ保安器、ケーブルをユーザーごとに分配するための幹線分配器などの電子機器。なかでもトランクアンプはケーブルの長さに応じた一定距離ごとの設置が必要なため、近年のCATV普及に伴って需要は急増しているという。

製品は100%を輸出。日本のほか、香港の拠点を通じてブラジル、台湾などの地域にも輸出されている。

■製品を支える「熟練の技」

CATV関連の機器には、巻きトランスやリ-ド部品を多用した実装部品ではないものがあり、生産過程のオートメーション化は難しい。

現在、主要部品の組み込みはほとんどが熟練工による手作業で行われている。「求められるのは日本の工場と同じクオリティ。一人前の能力を身に付けるには、やはり1~2年はかかります」と同社の常盤井徹・総経理。操業開始から10年、現在はベテラン技術者も育ち「日本人がつきっきりだった当初と比べればずいぶん楽になった」という。

テレビ放送やインターネットなどの信号を通す機器だけに、ミスは命取り。信号がストップした場合、下手すればユーザーとの補償問題にも発展する可能性があるため、最終チェックは念入りに行われる。トランクアンプはCATV局からユーザーに信号を送る下り用、ユーザーから信号を送る上り用ともに、組み立ての最終工程で利得やリターンロスなどを測定、調整。また最低でも8時間以上の通電を実施し、特性の変化をチェックする体制を整えている。

■自然環境への挑戦

経営陣
トランクアンプや幹線分配器などは、一度設置された後は10年以上の長期にわたって使用されることがほとんど。また基本的に屋外に設置されるため、精密機器ながら温度の変化や雨、雪などの自然現象にも完全に耐えうることが必要となる。耐久性はなにより重要だ。同社の渡辺章司・経理によると、製品は全数検査の一環として、組み立ての終了した製品を実際にテレビに接続、ケースの外からゴムハンマーで叩き、強度や衝撃による信号の乱れがないかなどをチェック。またケース内に圧縮空気を注入し、水槽に沈めて気密を確認したうえで抜き取り検査を経て、初めて出荷される体制となっている。

内部のICやトランジスタなど核心部品は全て海外からの輸入品。一部には中国に拠点を置く日系企業の部品も使用している。部品のランクを下げれば更なるコストダウンも可能だが「ケーブルの信号が途切れた場合の責任と損失は非常に重大。部品の選定においては常に確実性が優先される」と同社の山田學・経理。現在は全てにAランクの部品を採用している。

操業後10年、今では日本での製品トラブルをほぼゼロにとどめるまでになった。今後は国内部品の採用も考慮しつつ、さらなる台数の増加を図っていく計画という。【広州・菅原湖】

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