2001/01/22

第14回 広東順徳日清食品<日清食品>、おいしさの追究、本場中国で挑戦



いわゆる「本場」で活躍することの厳しさは、想像に難くない。即席めん最大手の日清食品は、「めん料理の本場」である中国に進出。最も豊かな食文化を誇る広東でも、人気を勝ち取っている。

広東順徳日清食品有限公司は1994年11月に設立、95年から生産を始めた。設立前から日清食品の製品が香港を通じて広東に入っており、すでに「出前一丁」のブランドが認知されていたという。

操業開始時の製品はカップめんと袋めんを2種類ずつだけだったが、現在では60種類の製品が同工場から広東を中心とした華南各地に出荷されている。生産ラインはカップめんと袋めんが1本ずつ。出荷先は7割が中国国内で、3割が香港。

同社工場では350人が働いている。日本では生産ライン約10本分に相当する人数だ。こうした生産体制は人件費の安い中国だからこそ可能。日本のように高度な機械を使うよりも、比較的簡単な設備で労働力を多く使ったほうが、製品の切り替えなどがスムーズという。

■ローカル色のある味

広東日清では2000年にマーケティング部門を新設。地元の人々に好まれる味を日夜追い求めている。

広東日清の平谷真二・総経理と佐藤修・工場長によると、広東のめんは断面の丸いものが好まれ、味付けの中では海鮮が断トツの人気。小麦めんもあるがビーフンのような米のめんも多い。

広東人は辛い味が苦手と聞いていたが、同社の製品には四川省のしびれる辛さを採り入れた「麻辣」味もある。これについて平谷総経理は、こうした辛口製品が湖南省や四川省などの消費者をターゲットにしたものと説明。好まれる辛さに地域差があることや、広東省内には多くの地方出身者がいることも指摘した。

中国のカップ焼きそばには、多くの味付けがある。日本とは大きな違いだ。日本では絶大な人気を誇る焼きそばソースだが、広東ではまったく評価されなかったという。どうやらすっぱい味は敬遠されるらしい。

広東ならではの味といえば、同社も取り入れているXO醤味だろう。XO醤のような豪華な調味料を取り入れたことについて質問したところ、佐藤工場長は同製品にはホタテなどの固形物が入っており、技術的にも難しいものであることを教えてくれた。

■カラフルな包装

同社がこだわるのは味だけではない。商品の外観についても研究を重ねている。例えば人気の「カップヌードル」。日本では白がベースの包装だが、中国では赤や黄色、それに金色などカラフルな色調を採用している。最初は日本と同じようなデザインを試したが、それではまったく目立たなかったらしい。このため白の少ないデザインに改め、現在に至っている。

■高まる消費者の要望

一昔前の中国の消費者は、即席めんについて「安くて早く食べられればいい」という考えが主流だったようだ。粗悪な油を使ったもの、すぐに伸びるめん、コシのないめんなどでも売れており、味に対する要求は低かったという。しかし食生活が豊かになり、海外から本格志向の「味」が国内に流入。即席めんに対しても、これまでになかった要望が出て来ている。こうした消費者の声に応えるため、同社は変わりつつある人々の「好み」を追い続けている。日中間には食文化の違いという壁もあるが、佐藤工場長は「絶対的においしい組み合わせが必ずある」とコメント。乗り越える自信を示している。


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