2004年10月26日

第139回 優仕珈琲<UCC上島珈琲>、現地焙煎で届ける老舗の味



UCC上島珈琲と味全食品工業などの合弁による優仕珈琲は1985年、台湾でのレギュラーコーヒー製造拠点として設立された。日系で唯一焙煎設備を持ち業務用顧客からの信頼が厚い同社は、缶コーヒーのパイオニアの遺伝子も受継ぐ。ここ数年コーヒー市場が目まぐるしく変化・拡大を遂げる中、生豆の焙煎のみならずコーヒー飲料の輸入販売、焙煎業者への生豆の卸売り、業務用およびオフィス用のコーヒーマシンリースなど事業範囲の多角化を図っている。

冷却機
台中の焙煎工場では、1日平均1トンの生豆を焙煎、年間約250トンの焙煎豆を出荷する。コーヒーに換算すると毎日約7万杯分が製品化されている計算だ。

焙煎工程は主に計量、焙煎、冷却の3段階。計量後金属片などのゴミを磁石やフィルターで取り除き、220度~480度の高温で焦げ付かないよう撹拌しながら加熱する。通常はガスを熱源とするが、炭焼きコーヒーの場合この段階で炭火の煙にくぐらせ風味付けを行う。約25分間加熱した後、香りを封じ込めるため高温の豆は冷気で一気に常温まで冷却。ガス抜きのために2日間定温倉庫に置き、必要に応じてブレンドやグラインドを行い包装、出荷となる。

台中工場で作られる焙煎豆は約9割が台湾市場向けで、製品は主にレストランチェーン、ホテル、航空会社などで使用される業務用、食品メーカーのコーヒー飲料の原料となる工業用、スーパーマーケットなどの販路を通じた家庭用だ。

UCC製品の台湾での市場シェアは、レギュラーコーヒーとインスタントコーヒーを合わせ、現在約10%の規模に達する。中でも業務用市場においては、台湾のモスバーガー、すかいらーくを始め中華航空、長栄航空、和泰汽車などを顧客に持ち確固たる信頼を築き上げてきた。同社の周昇龍総経理は、「現地で焙煎することで、顧客からのフィードバックに素早く対応できるほか、常に新鮮なコーヒーをお届けできるのが強み」と話す。

台湾ではここ数年、注文後に抽出するコーヒースタンドが大流行。消費者の味へのこだわりも強くなっている。それを反映し、商品の多様化と味の改良が目覚しいのがコーヒー飲料市場だ。優仕珈琲は、味全食品のコーヒー飲料「貝納頌」「36法郎」へ原料を提供。チルドタイプの「貝納頌」は1日5万本の売れ行きと好調なことから、消費者の一層の本格指向をにらみ、すでに大手コンビニチェーンとの提携で自社ブランドでの展開も計画中だ。

■トレーサビリティを徹底

経営陣
コーヒーの味を決める要素のうち大部分を占めるのが、生豆自体の品質と焙煎技術だ。出荷前サンプルで豆の検査とテスト焙煎によるテイスティング評価を行い、合格基準に達した豆だけを選別するのはもちろんのこと、生豆から商品まで日本のUCCスタンダードに沿った検査項目を適用、商品から原料の豆をさかのぼることができるトレーサビリティを徹底している。

また、コーヒー独特の豊かな香りやコクは、焙煎され初めて生まれるもの。同じ豆であっても時間、温度、熱源などで味や香りに違いが出るため熟練した焙煎技術も欠かせない。キリマンジャロやモカなど酸味を持つあっさり味のコーヒーも好む日本と違い、台湾ではマンデリンタイプのコクのある酸味の少ないコーヒーが好まれることから、大部分が中炒り~中深炒りの焙煎となる。

一見、急速に成熟したかにみえるコーヒー市場だが、課題もある。コーヒー豆の品質基準が明確でない台湾では、市場に出回っている商品の品質にかなりのばらつきがあるという。また、レギュラーコーヒーの一般家庭への普及率はまだ低いのが現状だ。

基準の制定や技術交流などを目的に、2年前には台湾コーヒー協会が発足。機関誌の発行や試飲会、コーヒー教室の開催など積極的な活動が始まっている。「コーヒー豆は消費者にとって中身が見えにくいもの。いわば信用で成り立っている商売」と周総経理は語る。コーヒーのリーディングカンパニーとして、業界全体の質を高めるけん引役としての活躍も期待される。【白幡茂子】

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