2004/09/07

第134回 奄美弾簧<奄美発條製作所>、設備から管理まで「自社製」のスプリング工場



中国進出16年、東莞長安鎮に拠点を構えて10年。自社開発の機器と管理システムでコイルスプリングを専門に生産、製品の高いクオリティと進歩的な経営理念の実践で、長安鎮を代表する企業の一つとして現地の日系企業の間でも広く知られているのが「奄美弾簧有限公司」だ。

同社の中国進出は1988年。(株)奄美発條製作所が製造業の間に広がる海外シフトの動きを受け、恵州市の企業へ出資したのが最初だ。その後は需要の急増に合わせ、91年に深A宝安区で新たに企業を設立、94年には東莞に主力部門を移管し現在に至る。98年にはISО9002を、2003年にはISО9001、ISО14001を取得。02年には清遠市にも新工場を設立している。

■月産量2億個以上

生産現場
同社の敷地面積は1万8,000平方メートル、工場の立屋面積は1万5,000平方メートル。主力製品は弱電、家電、ОA機器用のコイルスプリングで、扱う製品は1万3,000種類に上る。稼働しているスプリング製造マシンは計550台。同社の佐々木富雄総経理は「4年後の北京オリンピックまでには1,000台に増やしたい」と述べる。現在はフル操業に近い体制が続いており、昨今問題化している電力不足にも発電機の設置で対応、24時間3シフト制での生産が行われている。月産量は2億個以上と精密スプリング工場としては最大規模だ。佐々木総経理は「これだけの規模を持つところは少ないはず」と胸を張る。

■徹底したチェック体制

スプリングの中には複雑な形状の製品も多い。1カ所の成形ミスが致命傷となる場合もあるため、製品のチェックには非常に気を使う。成形されたスプリングは熱処理などにかけられたあと、全ロットが検査を経て袋詰めされる。製品はさらに袋の上からの出荷検査を終えた後で梱包されるが、梱包した後にもう一度、出荷ロットに対する最終検査が行われる。主な納入先は現地の日系メーカーなど。創立から顧客は右上がりで増え続け、現在の納入先は230社に達しているが、品質へのこだわりと信頼関係がなせる技か、これまでに契約を切られたことはほとんどないという。

■コンピューターによる統一管理

経営陣
「うちのような中小企業が優秀な人材をそろえることは難しい。だからこそ、それをカバーするシステム作りに努めた」と同社の名島清行董事長。同社では原材料の入荷、受注から製品の出荷まで、全てコンピューターによる統一管理が行われている。全てのマシンおよび工程に端末を設置、一つ一つ確認を行わなくても、どのマシンで何が今どれだけ作られているか、どの工程でミスが起きたかまでが一目で分かる仕組みだ。ソフトの開発からシステムの構築まで、全てを社内で行ったという。また使われているスプリング製造マシンのうち、約70%が同社の自主開発によるもの。本社との協同による設計、組み立ても工場の中で行われている。今後はほぼ全てのマシンを自社製に切り替えていく計画という。

順調な発展を遂げてきた同社だが、名島董事長は「中国でのものづくりは今がピーク」と語る。「状況は変わりつつある。これまでとは違い、今から新規参入しても今後は厳しい状況が続くだろう。製造業の中でも今後は淘汰が進んでいくはず」という。「人がやらないことを」。独自の経営手法で前進を続けてきた同社の、次の一歩が注目される。【広州・菅原湖】

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