2004/08/10

第130回 中山市霓紅真空科技<日本真空科学研究所>、設備産業と手作業の融合



すっかり社会に普及した感のある液晶プロジェクター。ここ数年は家電メーカーから次世代のハイエンドテレビとしてプロジェクションテレビも次々登場、市場を賑わせている。その液晶プロジェクターの核心部品である偏光変換素子(Polarizing Beam Splitter=PBS)を生産しているのが、中山市霓紅真空科技有限公司だ。

同社は(株)日本真空科学研究所の子会社として03年に設立。当初は半完成品の加工をメインに行っていたが、今年6月から設備を整え、本格的な一貫生産を開始した。

PBSとは

工場
PBSとは、通常光を一定方向偏光に変換することで、光量を有効に使用するための精密光学部品。通常光の中に50%ずつ含まれている鉛直振動波成分(S波)と水平振動波成分(P波)をインテグレータレンズや偏光ビームスプリッター膜、波長板などを通して全てS波またはP波に変換する。

一見するとただの小さなガラス板のようだが、実は精密技術の結晶だ。自社生産には長期にわたる研究と実験の積み重ねを要するため、PBSを生産できるメーカーは世界でもいまだ数少ないという。

■ミスの許されない40工程

経営陣
同社では位相差フィルム貼合など一部工程を協力会社に依頼しているほかは、偏光分離膜の真空蒸着のほか、ガラスの接着、切断、研磨などの加工までを全て社内で一貫して行っている。

PBSは研磨して厚さを整えたガラスを超音波洗浄、薄膜を真空蒸着し、接着。方向をそろえたうえで切断、ガラスどうしを貼りあわせて再び研磨を行い、完成となる。

工程数は全部で40以上。なかには切断など作業に12時間近くを要する工程もある。ほとんどがオートメーション化されているが、どうしても手作業でなければクリアできない細かい工程も存在する。また設備のコントロールや、製品の善し悪しの判断にはやはり熟練した職人の目が必要だ。同社の内田徹・副董事長は「設備産業でありながら、生産にはち密な手作業も不可欠。PBSはとにかく手のかかる製品」と述べたうえで「日本では工程の多さから、どうしても工場が分散しがち。これだけの工程を1工場でまとめて行えるのは中国ならでは」と語る。

設備産業の命は稼働率。また光学部品だけに精密さが要求される。切断の角度、研磨による厚さまで、少しでも規格と異なると使い物にならない。「目標は、設備稼働率100%、工程内在庫ゼロ、ST管理、目標良品率の達成の4つ」と原田学・董事総経理。また異物の混入などの汚れやひびも命取り。同社では蒸着など重要な工程は全てクリーンルーム内で行っている。ガラスなど原材料は主に日本から輸入しているが「将来に向け現地調達も検討中」(原田総経理)という。

現在、同社のスタッフは約40人。日本語より先に中国語でマニュアルを作成、ローカルスタッフに合わせた教育と作業の標準化を積極的に進めたこともあり、内田副董事長によると「休日を返上して目標達成に取り組むなど、モチベーションは非常に高い」という。またTPM(Total Product Management)などの導入も積極的に行っている。

現在の日産量は約600枚。稼働しているのは1ラインのみだが、プロジェクションテレビなどの普及に伴う市場拡大に備えて、ラインを大幅に増設する計画も進めている。今後も目標の達成に向け、生産性の向上に挑戦していきたいという。【広州・菅原湖】

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