2001/01/15

第13回 台湾・飛龍文具<ぺんてる>、飛翔し続ける文具界の龍



飛龍文具股フン有限公司――台湾ぺんてるの中国語名は、社章である天を駆ける竜の姿が由来という。同社は台湾に根を下ろして33年。従業員12人から始まった小さな工場が、今ではアジアにおける生産・物流の中心的な役割を担う。

台北市から車で約40分。陶器の生産地として有名な台北県鶯歌鎮に、台湾ぺんてるの工場がある。約6,050平方メートルの敷地に、生産施設4棟が立ち並ぶ。

工場の中をのぞいて、製品の多彩さに驚いた。主要な製品群だけでも、パスなどの固形画材、消しゴム、ボールペン、シャープペンシルの替え芯、カラーペンなど10以上に分かれている上、画材の色やペンの太さなど、それぞれの製品群の中でもバリエーションがある。阪本誓史総経理は「細かく分ければ数百種類はあるだろう」と話す。

■多彩な製品、多彩な製法

まずはボールペン生産を見学。プラスチック射出成形機で軸を打ち出し、専用の加工機がステンレス線から先端のチップ部分を作り出す。芯となる部分にインクを詰める工程があり、最後にこれらを組み合わせキャップをはめる。

画材作りは色の配合から。パスなど固形のものであれば、色を整えた原料を熱いうちに型に流し込み、冷えて棒状に固まってから打ち抜いていく。水彩絵の具はチューブに流し込む。メーンの部分ができ上がれば後は箱に詰めるだけ、と思いきや、台湾ぺんてるでは箱まで自家製だった。松下勝也工場長によると、「要求通りのものを大量に作れるメーカーがほかにないから」だとか。絵の具のチューブも、すずを加工して作っている。

プラスチック、金属、紙、化学原料……さまざまな素材の加工ノウハウを持っているのがぺんてるの特徴だ。

■全員で品質管理

工程が多いだけに、品質管理には特に気を使う。

松下工場長は「小さなものを大量生産しているので、どこかで少しでもミスがあると大量の不良品が生まれる。全員がプロ意識を持ち、自分の仕事に責任を持つことが重要」と話す。日本本社で開催されるQC大会に出場したり、社内勉強会を開いて常に意識向上に努めているという。

■今年はISO14001

台湾ぺんてるは1968年、東南アジア向け製品の生産拠点として設立された。当初は従業員12人、パスとシャープペンシルを小規模に生産していた。その後、工場は拡張を繰り返し、製品の種類も増加。72年に約1,500万台湾元だった年間生産額は、今では3億5,000万元を超えている。

製品は米国、東南アジアをはじめ世界各地に輸出され、約27%は台湾内で販売される。

製造業の中国シフトが進む中、ぺんてるも、中国・天津に工場を持っている。しかし、ノウハウの蓄積があり、付加価値の高い製品を生産できる台湾は、生産・物流拠点として重要性を増している。2年前から輸出用消しゴムの生産が日本から移管されたのに続き、今年度は替え芯を移管され、物流倉庫も従来の2倍に当たる約1万平方メートルに拡張した。

阪本総経理は「人件費は高いが、材料費比率が高い製品が多いのでコスト削減は可能。中国での事業展開にも台湾の経験が生かせるはずだし、台湾の役割はまだまだ大きい」と話す。

台湾ぺんてるは99年、品質保証の国際規格ISO9002認証を取得。現在は、排水処理システムの導入など環境保護への取り組みに力を入れ、今年中にISO14001認証取得を目指している。常に新たな目標を掲げ、文具界の龍は飛び続ける。

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