2004/07/13

第126回 東莞橋頭緑川電子廠<緑マーク>、スクリーン印刷の可能性を追求



東莞市橋頭鎮で、スクリーン印刷を主体に来料加工によるОA機器のタッチスイッチやメンブレンスイッチなどの製造を行っている東莞橋頭緑川電子廠。近年はスクリーン印刷を応用したアパレル製品への印刷転写など、新分野への積極的な進出も進めている。

同社が橋頭鎮に進出、生産を開始したのは2000年11月。母体である(株)緑マークの香港法人が営業活動を続けるうち、顧客の間で「製品の現地調達が可能な、生産拠点が欲しい」との声が高まってきたことを受け設立された。

当初はスクリーン印刷ではなく、香港から受注したパネルの組み立てなどを主に行っていたという。同社の近藤信広総経理は当時を振り返って「半年間は思うような操業ができない状態だった」と語る。その後01年にスクリーン印刷の設備を導入し、スクリーン印刷をメーンとする現在の業務体系へと方針を転換。日系メーカーを対象としたタッチスイッチやメンブレンスイッチなどの生産を開始する。

ゴミ、ホコリは大敵

生産現場
ラインではちょうど、コピー機のメンブレンスイッチが生産されていた。メーカーの新製品発売を控え、同種製品の生産も今ピークを迎えているという。 スクリーン印刷は1色ずつ色を重ねていく工程の繰り返しだ。7色の場合は色ごとに7回、刷りと乾燥をくり返す必要がある。スイッチ類の印刷に使用されるのは主にポリエチレンフィルムだが、近藤総経理によると「フィルム以外にもガラス、ポリカーボネイトまで、基本的にはどんな素材にでも印刷できます」という。印刷の終わったフィルムを、自社内でプレスし組み立てた部品や基盤に貼り付け、検査とプレスを経てメンブレンスイッチは完成する。スイッチ類には基盤を使用するうえ、貼り付け工程があるため、ゴミやホコリは大敵だ。同社は組み立てや印刷のラインを全てクリーンルームとしているうえ、出荷前にはワーカーによる徹底的なチェックを実施。異物が混入しないよう万全の注意を払っている。

■環境への配慮

経営陣
フィルムやインクなど、原材料のうち80%は日本からの輸入。副資材など製品自体に含まれないものは一部現地での調達も行っている。「なかでもインクには、コストがかかるのを承知の上で日本のものを使用しています」と近藤総経理。製品のデザインによっては調色も必要なため、インクの消費量は多い。中国でもインクが手に入らないことはないが、環境汚染に対する規制が強まり、製品の成分表示を求められる機会も増えているなか、インクの材料証明書をきちんと出せるローカルメーカーはまだ少ない。近藤総経理は「環境問題を考えると仕方のないこと」という。

同社ではこのほか、ステッカー印刷やアパレル製品へのタグ直接転写なども行っている。なかでもアパレル製品への直接転写は需要が伸びており、近く設備を拡大、月産量を現在の50万枚規模からさらに引き上げる計画だ。目標は月産500万枚という。「スクリーン印刷を活用できる分野はまだ数多い。今後も製品の幅を拡大していきたい」と近藤総経理は語る。

同社のローカルスタッフは現在ワーカーが約100人、管理職が20人。自動化された工程も多いとはいえ、やはり熟練した技術を持つ従業員の存在は不可欠。同社は定期的に食事会を開催するなど福利厚生を重視、ローカルスタッフのジョブホップを最小限にとどめる努力を続けている。近藤総経理は「小さな会社だからできること」としながらも「この会社で働いて良かった、と思える職場を作っていきたい」と述べている。「いつか現在のローカルスタッフが巣立って、彼らだけで全てをこなせるようになってくれれば嬉しい」。最終的には製品の開発も現地で行える、独立した体制を確立するのが目標という。【広州・菅原湖】

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