2001年12月11日

第12回 中芝軟件系統(上海)<東芝LSIシステムサポート>、マイコンに息吹、中国初のソフト開発



今年8月1日に設立された、マイコンの応用ソフトウエア開発とシステムサポートを行う中芝軟件系統(上海)有限公司。この分野で中国に進出する日系企業は、同社が初めてだ。同社が取り組むソフトや中国事業の展望などについて、親会社である東芝LSIシステムサポート(以下、TOLS)に聞いた。

第12回写真

TOLSは1996年、マイコンやLSIの分野で東芝のユーザーを技術サポートするのを目的に設立された。同社ではまず、ユーザーのニーズに応じてマイコンを設計、開発し、東芝の製品として販売している。さらに、完成したマイコンを作動させるためのソフトを開発する。マイコンという目に見える物を作るのは東芝だが、生産されたマイコンに決められた働きをするよう命令を与え、息を吹き込むのはTOLSだ。技術者の間では、「マイコンのハードも大事だが、最近はソフトのほうが重要」とまでいわれている。

■「身近な」マイコンをサポート

今回話を聞いたのは、同社の森秀雄マイコンソフトウェア部部長と平野昭・取締役総務部部長。平野部長は森部長を、「上海進出の仕掛人」と評する。「世界貿易機関(WTO)加盟を見据えたタイムリースタート、という感じになりましたが、今年2月に進出を決めた時点では、まったく考えていなかったんですよ」――森部長は今回の進出を、「半導体業界でも、中国が世界の製造拠点となりつつある大きな流れに沿ったもの」と位置付ける。

同社が上海で開発するのは、一般に「CISC(複雑命令型コンピューター=シスク)として知られるマイコンのソフト。森部長は「ソフトというとパソコン向けを連想することが多く、マイコン向けというのはピンと来ないかもしれません」と前置きした上で「マイコンは、家電、自動車など意外に身近なところで利用されているんですよ」と語る。例えば自動車では、さまざまな機能ごとにマイコンが組み込まれており、車輪でも1つにつき1つのマイコンが使われているくらいだという。「大事なのは、マイコンそのものよりもむしろ、われわれの作るソフトなんです」。

TOLSが主力とするのは、この中でもローエンドの家電向けマイコン用のソフト。このため、世界の家電のうち相当数が中国で生産されているという現状を踏まえ、家電メーカーを中心とした顧客に対するサービスの質と量をともにアップするするために、中国への進出を決めた。特に上海を選んだ理由は【1】上海にはもともと販売会社があり、顧客のサポートから業務を始めるのが自然だった【2】パソコンメーカーの多い北よりも、家電メーカーの多い南に進出したほうがよいと考えた――などという。森部長は「まずは足腰を強くしておかなければいけませんから」と技術者らしい実直そうな表情で話す。

高梁総経理

■世界に通用するソフトを

日系企業が組み込みマイコン用のソフト開発を目的として中国へ進出するのは、同社が初めて。また同社にとっても、海外でソフト開発を手掛けるのは初めての試みだ。

東芝グループとしてはこれまで、台湾と韓国にLSI(高密度集積回路)デザインのための子会社を設置しているが、マイコンのソフト開発は行っていない。では今回の上海進出を皮切りに、ほかの国へも拠点を広げる意向かとの問いには、「現時点では、中国以外への進出は考えていない。中国にあと2カ所くらい拠点を置くことは考えているが、詳細は決まっていません」という。

森部長と平野部長は、「上海で重要なのは、システム技術を育てること。ただし今のところはまだ、試行錯誤の段階」と口をそろえる。上海の中芝は、社員30人のうち中国での採用が28人、うち技術者は25人で、17人までがこの夏に大学か大学院を出たばかりの新人という若い会社だけに、「今後のことは未知数」というが、これからの事業展開については「中国で、世界に通用するソフトを作り出したい」と意欲を見せた。

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