2004/02/10

第106回 天津費加羅電子<フィガロ技研>、品質が支える安心のガスセンサーと警報器



フィガロ技研は世界で初めて半導体ガスセンサーを開発した日本が誇るハイテク企業の一つだ。社名の由来となった「セビリアの理髪師」の主人公「何でも屋のフィガロ」のように、何にでも挑戦するバイタリティとチャレンジ精神で、早くから中国に進出。最初は困難もあったが、安全への意識が高まるにつれて業績も上向き、事業拡大の時期を迎えている。

製品
「天津費加羅電子」は、フィガロ技研の海外初の生産拠点として、1990年に日本側3社、中国側2社の合弁で設立された。「中国市場の可能性を見込んで進出した」(大越時夫総経理)というが、ガス漏れ警報器の認知度がまだ低かった上に、天安門事件の直後で海外投資が冷え込んでいた当時を考えれば、異例の選択だったとも言える。

現在生産しているのは各種ガスセンサーと警報器。代表的な製品である半導体ガスセンサーは、半導体の表面にガス分子が吸着したり反応すると半導体の電気的性質が変化することを利用し、ガスの濃度を測定するもので、フィガロ技研が1968年に世界で初めて開発、実用化に成功した。

中核となる感ガス素子は米粒よりも小さく、全体でもブドウほどの大きさしかないセンサー。生産はすべて手作業で行っている。まず基体に電極(リード線)を付け、続けて感ガス体(酸化錫)を付ける。これにヒーター線を通して加熱機能を付加。その後リード線でベースに接合する。

宙づり状態で稼働する感ガス素子は、これを支えるリード線が断線すると使い物にならないだけに、接合作業には慎重を要する。一人前になるまでに、少なくとも数カ月は要するという。

キャップを付けて形になったセンサーは、一旦電気を通して安定化させる。その後、その後、自動化プロセスにより実際にガスを注入して感度をチェックし、ようやく製品となる。

センサーはわずかな臭いをキャッチするデリケートなものだけに、生産の環境や雰囲気によって、その特性が変わってしまう。普段の作業ではこうした点にも細心の注意を払い、さらにセンサー特有の工程内検査技術を駆使して品質の確保に努めている。

■安全の考え方に変化

大越時夫総経理
早すぎた進出のため、最初は業績がなかなか伸びなかった。当時の中国は驚異的な経済成長の一方で、安全対策への取り組みが遅れており、一般家庭はもちろん、公共の場所でもガス警報器を設置するという意識に乏しく、業績は横ばいを続けてきた。このため日本向けの製品を生産し、その輸出で売上高をカバーしてきたという。

近年は生活水準の向上とともに、安全にお金をかけるという意識が強まり、ガス警報器の知名度も上昇。国もガス警報器の基準を設けるなど、普及に取り組むようになった。これに伴って同社の国内販売も増え、全体の売上高はここ4年で急増、2002年には1999年の2倍以上となった。昨年はやや落ち込んだが、これは輸出を減らしたためで、国内販売は増え続けている。

■価格よりも品質で勝負

現在の年産能力はセンサーが約500万個、警報器が約50万台。今年からより小型の新製品を生産すると同時に、生産ラインを拡張する予定。これにより年産能力を100万個増やすとともに、生産の自動化に着手する。

他の日系企業と同様、同社もコピー商品の登場に悩まされている。市場拡大を背景に中国でもセンサーやガス警報器のメーカーが増加。今では大小合わせて200社ほどある。しかし「出回っているのはほとんどが当社のコピー」(大越総経理)。外観は似ているが中身はお粗末で、機械的耐久性や長期安定性のチェックを経て作られてはいない。

同社製品はライバルより高めの価格設定となっているが、「高いからこそ安心して使えることを消費者は分かってくれるはず。当面、一種の識別としたい」という。高くても良い品質が支える安心感。自社製品に対する絶対的な自信からは、ものづくりへのこだわりがうかがえた。
【北京・長野雅史】

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