2004/01/20

第104回 広州芸愛絲繊維<チッソ>、目指すはアジアNO.1のオレフィン系繊維総合メーカー



柔らかく吸収性が高いことから、紙おむつなどに広く使用されている不織布。広州芸愛絲繊維は、その原材料であるES(Ethylene―Propylene Side by Side)繊維から不織布までを、一貫生産している数少ないメーカーの一つだ。

経営陣
同社がチッソと伊藤忠商事、現地企業(現在は撤退)の3社による合弁という形で、広州経済技術開発区に進出したのは1994年。高まるES繊維および不織布への需要に、海外での増産で答えることが目的だった。もともと製品の多くは米国、アジアにも輸出されていたため、候補地として当初は米国も挙がっていたが、港が近く輸出が容易なこと、外資企業の受け入れ環境が整備されていたこと、また将来的なマーケットの拡大なども見据えて、最終的に広州を選択したという。

■ES繊維と不織布

ES繊維とは、チッソが開発した熱接着複合繊維の一種。ポリプロピレンとポリエチレンを溶かして流しだし、ポリプロピレンを芯とした極細の糸を作る。その糸を加熱、延伸して強度を持たせた後に、クリンプ加工を行ってウエーブをつけ、それをカットして原綿が完成する。不織布はさらにこのES繊維の原綿を開繊しカード機で一定の厚さにした後、熱を加え、ロール状に巻いたのちカットして 完成する。立ち上げ当初はポリプロピレンなど原材料全てを日本から輸入していたが、現在は包装材料など一部を現地調達に切り替えている。現在の年間生産能力は原綿は1万トン、不織布は3,600トンに達している。

生産現場
これらの製品は、主に紙おむつや女性の生理用品などに使用されることが多い。直接肌に触れる敏感な製品であるため、生産現場は常に清潔に保つ必要がある。同社は工場入り口にカーテンやエアカーテンを設置し、手袋の着用を義務づけるなど、異物が入り込まないよう気を使っている。生産工程のほとんどはオートメーション化されており、ライン上にもスタッフの数は少ないが、それでもやはり最終的に製品の出来はスタッフの腕にかかってくる。同社は94年の設立後、95年に工場建設を開始し高い日本の品質レベルをそのまま再現するため、人材教育も含めた広州での生産体制を築き、97年より正式操業開始に至っている。

■自主性重視

同社はカギとなる人材の教育について「自主性」をなにより重んじている。言われたことをただこなすだけではなく、自主的にレベルアップしていけることが重要。同社は各種課題について組織横断型のタスクチームを作り、実践を通じてスタッフの課題解決能力が一定レベルに達した時点 でまかせていく、という教育を続けるそのかたわら、TОC(Theory of Constraints、制約理論)を積極的に導入。在庫削減、生産リードタイムの削減、生産量の拡大などをスタッフとともに行ってきた。同社の木庭竜一総経理は「その結果、スタッフの意識もずいぶん変わった」と述べる。「著しい発展を続ける中国の中で、自分たちは今、コスト競争力を保ちながら良質な製品を作っているのだという自覚を持つようになってくれた」。現在では設備の改善などについても、現場から積極的な提案が出るようになったという。

「今後も仕事をして楽しいと思える環境を保ちつつ、スタッフの自主性を大切にサポートしていきたい。いつか日本の工場を超えるまでになってくれたら」と木庭総経理は語る。

今後は一貫メーカーとしての強みを活かし「アジアナンバー1のオレフィン系繊維総合メーカーを目指す」という。
【広州・菅原湖】

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