2001年11月13日

第10回 台湾・国瑞汽車<トヨタ自動車・日野自動車>、改善を追求し、現地メーカーをも育成する



台湾北部の中レキ(土へんに歴)工業区。ここには、台湾ナンバーワンを争う自動車製造メーカー・国瑞汽車(以下国瑞)の工場の広大な敷地が広がる。同社はトヨタ自動車と日野自動車、および台湾現地資本の3社の合弁で、中レキ工場ではコロナ、ターセルと、今年3月から生産が始まったカローラの3種類の乗用車を製造している。

■設計段階から最高の効率を

台湾の自動車市場は1994年の57万台をピークに年々減り続け、昨年は42万台、今年は不況のために35万台前後とみられている。この狭い市場に、国産メーカー10社、主なメーカーだけでも国瑞を始め、中華汽車(三菱自動車系)、裕隆汽車製造(日産自動車系)、福特六和(フォード系)、三陽工業(ホンダ系)と、5社が激しいシェア争いを繰り広げている。このため、各メーカーにとって、生産コストの削減は重要な課題だ。

安価な部品を使えば、生産コスト削減は容易。しかし、国瑞は部品の品質と機能をさらに改良した、コスト削減の実現を徹底的に追求する。この方法論について、同社の原田武彦社長は、「設計段階から、最も効率のよい方法でコストを抑え、さらに設備仕様のスリム化と物の流し方の改善を図れば競争力は上がる」と語る。

原田社長は、トヨタ自動車の工場や本社生産調査部などの部署を歴任。「トヨタ生産方式」の生みの親として名高い大野耐一・元副社長の指導を受け、キャリアを形成してきた。国瑞汽車の社長として赴任したのは1999年。赴任を機に、「全体のシステムの中でトヨタ方式を柱として取り入れ、それをベースに現地化によるoperationを促進する」ことを考えた。

まず、工場部門は、工場長以下を全員台湾人にした。そして、物づくりの考え方、ラインの作り方、改善活動について、直接現場で指導した。

また、国瑞が抱える傘下の部品メーカー主要30社にも、同じように自ら頻繁に訪れて指導を行っている。「メーカーさん訪問はこれまで80社くらい行きました。今では行くたびに新しい改善を見せていただけるのが楽しみです」。

■改善で生産性の上がるライン

さらに、新しく生まれる生産ラインでもチャレンジは続く。ロボット主体の自動化を重視したラインから、市場規模に見合った、さらには生産工程の中でより改善を探れる、作業員の手作業に委ねるラインを選択したのだ。ロボットから手作業に切り替えることにより、従来よりも生産性は落ちるが、設備投資を含めたトータルコストは確実に安くなる。さらに、ラインの中で改善が進むことで、国瑞の技術・技能も集積できる。「従業員のパワーを信頼した、改善により生産性の上がるラインです。このようなラインができた結果、ラインのスペースが従来の半分となり、工場の在庫も大幅に減った」と、原田社長。

なぜ、ここまで改善を追求するのか、現場を案内してくれた王・第2製造部長に尋ねてみた。「私たちは、生き残りたいからです。自動車は、価格競争がものすごく厳しい。でも、部下は皆、理解してついてきてくれています」。

来年、国瑞は市場にカムリを投入する。国瑞ブランドらしい、高級感のある仕様でユーザーをつかみ、目標の市場シェア25%を達成する計画だ。「シェアはもちろん重要ですが、国瑞には、『車づくりを通じて台湾の産業に貢献する』という理念があります。今後も競争力のある部品メーカーを、より多く育てていきたいですね。」と、原田社長は職人らしい言葉で締めくくった。


NNAからのご案内

出版物

SNSアカウント

各種ログイン