2001年10月30日

第9回 北京華歌爾時装<ワコール>、中国人女性の体型を徹底調査



俗に「欧米100年、日本50年、台湾30年」というらしい。ブラジャーを付ける習慣が一般に広まってから、どれくらいたったかを示す言葉だ。この点では出遅れた中国だが、近年の経済成長に伴って、下着に気を使う人が増えてきた。百貨店を中心に高級市場が形成されつつある。

■日中女性の形の違い

「日本人と中国人とではバストの形が違うんです」――。北京ワコールの安原弘展総経理はこう力説する。ワコールは中国では北京、上海、広東にそれぞれ現地法人を持ち、生産している。うち北京ワコールは1986年に設立された、日系では初めての下着メーカー。もともと合弁で始まったが、昨年末に合弁を解消、独資となった。現在は仮住まいで新しい工場を建設中、来年3月から生産に入る予定だ。

同じ女性が身に付けるものといっても、日本の製品を中国にそのまま持っていっても売りにくい。バストの形が違うからだ。日本人はバージスライン(バスト下部のまるい弧のラインで、カップのカーブにフィットする部分)が狭く、前に飛び出た形。これに対し、中国人はバージスラインが広く、お椀のような丸い形。中国人が日本人用のブラジャーを着用しても、先が余ってしまうのだ。

中国人女性の体型をより理解しようと、ワコールは1997年と1998年の2回、中国紡織大学服装学院と共同で体格・体型調査を行った。対象は上海に住む華東、華北、華南の出身者1,100人で年齢は、18~40歳。

この調査によると、バストの大きさという点では、体格の小柄な華南が華北、華東より小さいという特徴はあったものの、バスト、ウエスト、ヒップの周経のバランス、すなわちプロポーションでは3地域に差がないことが分かった。

体型・体格と同時に、女性が自分の体について、どこまで知っているかを理解する調査も行った。これによると、バスト周経を正確に知っている人は少ないが、地域で比べると華東地区のほうが自分のサイズを把握している人が多く、おしゃれな上海女性は下着に対する意識も他地域より敏感なことが裏付けられた。同社はこうしたデータをもとに、下着開発の基礎としている下着設計用人体模型の中国版を作成、生産に応用している。

ブラジャーサイズで言えば、以前はA中心と小さめだったが、食生活の変化に伴い、若い人を中心に最近はサイズが大きくなってきた。品番によってはCがAを上回ることもあるそうだ。

また、アジアはシームレス(縫い目がない)タイプが人気で、中国も例外ではない。ワコールはこれまで少なかったが、来年から増やす予定という。

■材料調達に苦労

実際の生産に当たっては、材料の調達に苦労してきた。最初のころは、下着素材として重要な合成繊維スパンテックス(伸縮性、耐久性に優れている)を利用した素材が手に入らず、輸入しようにも関税が高かった。

95年ぐらいから日系企業が生産を始め、98年には初めて100%中国産の材料による製品を生産。現在、日本産の材料比率は35%ぐらいで、昔よりは減っているという。

■新工場で追い上げ

中国の下着市場は戦国時代。トリンプを筆頭に欧州系や台湾系が相次いで進出し、中国内のメーカーも力を付けている。一方で有望市場であり、しかも女性が下着にかけるお金は、収入比で見るとかなり高い。

ワコールは現在の規模こそ小さいものの、各地のデパートなどから進出を期待する声は大きい。新工場ではこれまで150万枚だった年産量を250万枚に引き上げ、設備更新なども行うことで、追い上げを図る構えだ。


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