2001/09/25

第7回 昆山統万微生物科技<キッコーマン>、雑菌との格闘、香り求め本醸造



美味いしょうゆは清掃につぐ清掃から生まれる。しょうゆの命・香りを求め、自然の恵みを最大限に生かす本醸造にこだわったときから、雑菌との戦いが始まった。前工程では仕事の6割以上が洗浄というしょうゆ造り。中国で進む日本の味造りの舞台裏をのぞいてみる。

上海市内から車で1時間弱。昆山市経済技術開発区にキッコーマンが50%出資して設立したしょうゆ工場がある。パートナーは台湾の統一企業。昆山統万微生物科技有限公司と研究所を思わせる社名だが、工場の中に足を踏み入れるとほんのりと大豆の香りが漂っている。

来春の初出荷に向け仕込み

工場では、来年1月の初出荷を控えて仕込みの真っ最中。しょうゆ麹と食塩水を混ぜたもろみを、4カ月半かけて発酵タンクで発酵・熟成させた後、加熱し成分を整えれば、しょうゆができあがる。

大きく分けてしょうゆには、本醸造とアミノ酸混合がある。本醸造しょうゆに酸分解アミノ酸液や酵素処理液を混ぜ込むアミノ酸混合は、どうしても独特のにおいが残る。日本では約8割が本醸造。香りにこだわるキッコーマンは、中国でも本醸造を選び、美味いしょうゆを中国でも広めようとしている。

統一企業とは台湾でも合弁を組み、しょうゆを生産している。台湾はアミノ酸混合が主力。発売当時、割高で売れ行きが思わしくなかった本醸造だが、健康志向の高まりなどに伴い、今では台湾でも本醸造の良さが認められるようになった。

昆山統万微生物科技はキッコーマンブランドで本醸造、統一ブランドでアミノ酸混合を生産する。小売価格差は3倍以上。中国でも値段がネックで最初は期待できないが、「台湾と同様に必ず本醸造は売れるようになる」と、同社の渡辺博治総経理は確信している。「なるべく早く、良いものを使ってくれそうな土地」ということで、大市場・上海に近い昆山が選ばれた。江蘇、浙江、安徽などが当初のターゲットだ。

大豆・小麦は中国産

「大豆はアメリカやカナダのものですが、小麦と食塩、水は中国で調達しました」(渡辺総経理)。大豆は脱脂加工したものを中国の企業から購入。水は硬水なので軟化する手間がかかるが、しょうゆの色や香りに影響するほどではないという。

水洗、乾燥、アルコール消毒。しょうゆ麹を作るまでの前工程は掃除に始まり掃除に終わると行っても過言ではない。しょうゆ麹は、大豆、小麦を細かく砕き、種麹を加え、撹拌(かくはん)を繰り返す製麹(せいきく)と呼ばれる作業でできあがる。

しょうゆメーカーの秘中の秘である種麹だが、一般的に育ってほしい菌ほど弱く、これを培養するため湿度を上げるなど環境を整えると、強い雑菌は倍の速度で増えていく。これを防ぐには衛生に気をつけるしかない。

甘味は必要か

もろみの発酵・熟成も味を大きく左右する。醸造学などを学んだ担当者がもろみを管理するが、うま味のもとになるアミノ酸分解がうまくいくかどうかは、このハンドルの切り方1つにかかっている。

「台湾では甘味を加え、彼らの舌に合わせています。中国でも日本のままの味が売れるとは思わない」。渡辺総経理は中国の食感に合わせた商品開発の必要性を説く。ただ、中国でも健康志向が高まり、本醸造に目が向くのは確実だと言う。「上海に来て1年経ちますが、当時と比べるとグルタミン酸の味しかしない店が随分少なくなっていますから」。


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