2001/08/28

第4回 香港・サニーホース<タカタ>、たかがホース、されどホース



巨大な機械の先端からスルスルとホースが送り出されてくる。工場は24時間休みなくホースを作り続け、生産量は年間2,000万メートルにも達するという。工場が2年間動けば、サニーホースは地球をぐるりと一巻きしてしまうわけだ。

Sunny Hose Co., Ltd.は、農業かんがいや土木排水、鉱業排水、水害復旧などに利用されるPVC(ポリ塩化ビニル)フラットホースを生産している。家庭でよく使われる管状のホースとは異なり、折り畳みに便利な平たい形状をしているのが特徴。

一度に大量の水を送るため、製品は家庭用よりかなり太い。最もよく売れるものは、直径が50ミリメートル。災害時などに使われるもののなかには、直径400ミリという特太ホースもある。水圧に対する性能も、用途によって何種類にも分けらていれる。

香港で作り続けて20年

「サニーホース」はもともと、自動車のシートベルトやエアバッグで知られるタカタ株式会社のブランドだった。汎用(はんよう)品をより低コストで生産するため、1978年にホース部門が香港に進出しSunny Hose Co., Ltd.を設立。1980年から、大埔の工業団地で生産を開始した。

その後、徐々に高機能ホースの生産も香港に移管し、現在では「サニーホース」ブランドはすべてここで作られている。

上から下へ流れるライン

本社・工場の敷地は1万1,000平方メートル。工場部分は6階建てで、隣接する倉庫には常時150万メートル分の在庫を収納している。

ホースの材料となるのはポリエステルの糸と粒状(ペレット)になったPVC。同社では、PVCの粉をペレットに加工するところからホース作りが始まる。できあがったペレットや外部から購入した糸などの原材料は、それぞれの工程から機械に投入されていく。糸の投入工程は、まるで紡織工場のよう。大きな糸の玉がズラリと並び、規則正しく糸を送り出す。数ヵ所から供給された糸はそれぞれ縦糸、横糸となって、ホースのしんになる糸の束を作っていく。その後、糸の周りにはPVC被膜のコーティングが施され、ここでようやくホースの姿になる。

この一連の工程が、工場の上の階から下の階に向かって進められている。生産ラインを垂直にしているのは、◇肉厚を均一にしやすい◇生産速度を上げやすい◇工場敷地を節約できる――などのメリットがあるためだ。

ホースの新たな可能性

同社は、PVCフラットホースのトップメーカー。野中純総経理によると「サニーホースといえばこの種のホースの代名詞になっている」という。日本、米国を中心に、欧州、東南アジア、中東にも出荷する。

サニーホースの一番の強みは何だろう。野中総経理は、「お客様に与える信頼感」と言い切る。

安定した品質を確保するため、原材料の品質にはとことんこだわる。例えばポリエステル糸は、引っ張り強さはもちろんのこと、加熱したときの縮み具合なども要求項目になる。製品の直径に微妙な影響が出るからだ。「原料メーカーが、当社の要求の細かさと厳しさに驚きの声を上げることもある」という。

万一にも備える。どんなに耐久性に気を配っても、ホースは破れることがある。野中総経理によると「当社製品は、縦方向の強度を横方向よりも強く設計している。こうすれば万一の時もホースが縦に裂けるだけで、横にちぎれて飛び散ることはない」。

サニーホースはまた、送水に限らない新たな用途も提案する。平たいので「空気を通すと膨らむが、この伸縮をコンベヤーなどの駆動源として使える。ホースだから形状を立体的に変えられる」。また「コンクリートを垂直に流すときサニーホースを使えば、管状のホースのように一気に流れ落ちることはなく、速度を調節しやすい」という。

「水を流す」という行為が、日常生活からなくなることはない。だからこそ、コスト削減、軽量化、耐久性強化、環境にやさしい製品の開発……付加価値を高めるための挑戦は続く。「たかがホース、されどホース。奥が深いんです」野中総経理の言葉に、トップメーカーの真骨頂が表れている。

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