2001/08/07

第3回 資生堂麗源化粧品<資生堂>、中国国民ブランド目指す



香料の香りがほのかに漂う構内は、工場というより研究所、病院といった雰囲気。異物の混入を防ぐため、見学の際には、外来者も白衣、帽子、靴カバーを着用する。遠くにかすかに聞こえる機械音。化粧水や乳液、口紅がオートメーション化されたラインをぐるぐる回っている様子を想像するが……。

青木総経理と平岡工場長

中国女性に向けた美の発信基地「資生堂麗源化粧品有限公司」は、北京経済技術開発区に位置する。今年12月に創業10周年を迎える同社は、自社ブランド「AUPRES(欧珀莱)」シリーズの2000年の生産量が700万個、売上高は50億円(推定)、創業以来の年平均売上高伸び率は130%と、好調な業績を挙げている。

優秀な社員は機械に勝る

生産現場は意外に小規模だ。完全自動化の生産ラインを想像していたが、さにあらず。中でも、仕上げラインは手作業が中心だ。

「外部の方にお見せするのはちょっと恥ずかしいんですが」と、戸惑い気味の平岡治工場長。視線の先には、ペースト状の口紅をへらで型に押し込む女子従業員の姿が。「設備を導入するより、人手を使ったほうがコストが安いという理由もありますが」と前置きした上で、現地従業員の器用さ、鑑識眼の良さ、まじめさを強調する。

オートメーション生産では、途中で口紅が折れたり、異物が付着してしまっても、最終工程までそのまま流れてしまうが、手作業ではライン上で全数検査をしているに等しく、そうした弊害を防げるという。なるほど、ラインを流れる製品を追う女子従業員のまなざしは鋭い。「彼女らは非常に目が利きますよ」と、平岡工場長は顔をほころばす。

口紅の製造風景

品質・ブランド基準は死守

現地生産によるコスト安のメリットを享受しつつも、品質・ブランド基準は絶対に落とさない。同社は現在、約800種に上る材料(容器、キャップ、ケース、ラベル、外箱など)について、ほぼ100%現地調達化を実現。一方、原料約300種はその90%を依然として日本からの輸入に頼っている。原料については、すべて日本・資生堂の研究所に送られ厳しい検査を受ける。「現地の原料もレベルはかなり上がってきているのですが、色、香りなどで今一歩及ばない」。その差は既に感覚レベルというが、譲れないラインという。

いつも「傍らに」

資生堂の中国専用ブランド「AUPRES」はフランス語で、「傍らに」「そばに」といった意味。一つの国をターゲットに、し好、肌質、気候などを研究、製品開発を行い、かつ現地生産を実現したブランドはこれが初めてだ。青木侃総経理は「中国国産品の最高級ブランド、中国国民のブランドを目指している」と説明。「中国の厳しい自然環境から肌を保護し、潤いを与えて健康な肌を保つ」を基本コンセプトに、中国人女性の傍らにひかえ、その美しさを演出していく。

創業以来、平均成長率130%を維持している資生堂麗源。青木総経理は中国の世界貿易機関(WTО)加盟による輸入化粧品の関税低下も、同社にとって「利多くして弊少なし」とみる。「顧客の一部が輸入品に移ったとしても、経済成長に勢いがつくことから、購買層は広がり、新たな愛用者が増え、トータルとしてはダメージを受けないだろうし、また受けないようにする」と、力強く語る。そこに、国産最高級品を送り出しているという自負を見た。


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