2001/07/17

第2回 香港・カルビー四洲<カルビー>、年間5千トンのイモが市場に



「どうです?おいしいでしょう。できたてが一番なんです」――新鮮なジャガイモが見る見るうちに皮をむかれ、スライスされていく。揚げたてのアツアツを1つもらって口に運びながら、石川芳社長の言葉にうなずいた。ここでは年間5,000トンのイモがポテトチップスに姿を変える。

カルビーと、香港最大の食品会社である四洲集団が1994年に合弁で設立したカルビー四洲有限公司は昨年1月、1億1,356万HKドルを投じて将軍澳の工業団地に工場を新設した。面積は9,200平方メートル。

製品は大きく分けて◇ポテトチップス◇かっぱえびせん◇やきもろこし◇野菜スナック――の4種類。合わせて年間5,000万袋を生産している。

鮮度、原料、ブランド

これら4大商品の中で最も生産量の多いのがポテトチップス(全体の約半分)。だが、新工場ができる以前は、ポテトチップスはカナダから輸入していた。

石川社長によると、新工場を設立した最大の目的はポテトチップスを生産することだった。パートナーの四洲集団から「香港の消費者に、新鮮なポテトチップスを食べさせたい」と言われ、引き受けた。

工場の立地については、人件費の安い広東省も検討したという。それでも香港に決めたのは「より鮮度の高いものを市場に届けられるから」だが、ほかの理由もあった。

カルビーのポテトチップスは、生のジャガイモが原料。主にオーストラリアやニュージーランドから、加工に適した種のイモを輸入している。しかし中国本土の検疫では、泥がついた生のイモは輸入禁止。現時点では華南に十分な原料がないことから、生産は難しいという。

もう1点は、香港人の意識の問題。「メードイン・チャイナ」は歓迎されないのだという。石川社長は「ここでポテトチップス生産を始めた当初も、現地スタッフからは『メードイン・ホンコンよりも日本の商品であることを強調した方がいい』と言われた」と明かす。

歯触り薄く、味は濃く

日本人にとって非常になじみのあるポテトチップスだが、実は香港で販売しているものは味や食感が微妙に違う。現地で生産するようになってから、徹底的な試食調査を繰り返し、香港人のし好を分析した。

そして「香港人は軽い食感、濃い味付けを好む」という傾向をつかんだ。そのため、厚さは日本のものより薄めにしてある。カレー味のチップスなども、調味料を香港人向けに変えたので、本家とは別ものになったという。

新工場の設立以来、売り上げは毎月、前年比30%のペースで伸びている。

捲土重来なるか?「うす塩」

カルビーが香港で最初にポテトチップスを売り出したのは1980年。四洲集団の反対を押し切り、主力商品である塩味を投入した。

結果はパートナーの忠告通り。香港人にうす味は全く受け入れられなかった。

それから20年余りがたった今年、カルビー四洲は「うす塩」を売り出した。香港人の味覚が変化してきたことに加え、「プレーンな味でこそ新鮮さが伝わる」という自信に裏打ちされている。

石川社長によると、発売から数カ月で「ほかのどの商品よりも売れている店もある」という。

カルビー四洲には現在、日本のカルビーからの派遣は石川社長1人だけ。今後はさらに地域密着を目指し、商品開発なども現地スタッフ主導にしていきたいという。

香港スナック市場の45%を抑えるカルビー四洲だが、決して守りには入らない。これからもどんどん新技術・新製品を導入し、さらにシェアを伸ばしたい考えだ。


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