2004年10月20日(木)

第3回 「経営範囲」[経済]


先生:前回、前々回と中国の土地制度について勉強しました。中国においては、私人は土地を所有することができず、払下げ又は割当土地使用権を取得しなければならないことを繰り返し述べてきました。1つ補足しておきますと、国から直接土地を賃借する方法もあり、これによって土地を使用する権利を賃借土地使用権と呼んだりします。これは払下げ金を支払わずに毎月の賃料のみで土地を使用することができますので便利です。この点も覚えておいてください。 生徒:分かりました。いずれにしても、国が土地を所有していて、私人に何らかの使用権を与えるという構造は、日本の感覚とは大分違いますね。

先生:日本の感覚からは理解が難しいテーマとして、今回は、中国企業の経営範囲を勉強します。全ての中国企業は経営範囲を有しています。経営範囲とは、企業が従事する経営活動の範囲であり、工商行政管理局において登記され、営業許可証に記載されます。

生徒:その経営範囲というものは、登記されるそうですが、審査認可も経なければならないのでしょうか?

先生:経営範囲には、許可経営範囲と一般経営範囲の2種類があり、前者は関係部門の認可を取得した後に登記されるべき経営範囲であり、後者は審査認可を経ずに直接登記することのできる経営範囲です。外商投資企業設立プロジェクトは、商務部門の認可が必要ですので、全て許可経営範囲になるものと考えられます。

生徒:審査認可を要する場合には、その際に経営範囲もチェックされるけれども、経営範囲だけを特別に審査するプロセスはないということですね。でも、なぜ経営範囲という概念が中国企業に必要なのでしょうか?

先生:計画経済の時代においては、企業というものは、国から経営権を与えられて、その範囲内でのみ活動するものであるという発想があり、経営範囲という概念は、主にこの発想に基づいていると考えられます。市場経済に移行した現在となっては、経営範囲の規制は時代遅れとなりつつあるのですが、未だに廃止されることなく存続しています。

生徒:なるほど。もし経営範囲が個別具体的に記載されなければならないとしたら、企業は経営範囲に拘束されて、柔軟な経営をすることが困難になるのではないでしょうか?

先生:そのとおりです。そこで、2004年2月15日に公布された《市場参入制度を改革し経済発展環境を改善することに関する若干の意見》と題する北京市の規定は、営業許可証における経営範囲の記載について、以前のような個別具体的な記載方法ではなく、包括的な記載方法を採用する旨を規定しており、これによって、経営範囲の拘束は以前よりも緩くなりました。時代の流れとしては、かかる北京市のような規定が各地で制定されていくのではないかと予想されますが、全国的には、なお個別具体的な記載方法が採用されています。

生徒:その包括的な記載とは、どのようなものですか?

先生:外商投資企業の場合、「【1】法律法規及び国家外商投資産業政策が禁止しているものについては、経営してはならない。【2】法律法規が審査認可を要すると規定し、及び国家外商投資産業政策が経営を制限している項目は、認可を取得するまで経営してはならない。【3】法律法規が認可を要すると規定しておらず、国家外商投資産業政策が経営を制限していないものについては、経営項目を自主的に選択して経営活動を展開する」と営業許可証に記載されます。即ち、法律法規に違反しない限り全ての活動を行ない得る旨の記載になったわけです。

生徒:それは、画期的な改革ですね。北京市以外の地区においては、依然として個別具体的な記載を要しているそうですが、経営範囲を超えて経営活動をすると、どのようなリスクがあるのでしょうか?

先生:それでは、経営範囲を超えて活動をしている疑いのある場合の職権検査、経営範囲を超えて活動した場合の行政及び刑事処罰、経営範囲を超えた活動の効力等について、次回説明しましょう。

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