2004年 9月30日(木)

第2回 「中国の土地制度」[経済]


先生:前回、国有土地の払下げ土地使用権と割当土地使用権の相違を中心に勉強しました。

生徒:はい。払下げ土地使用権が有償で取得する土地使用権であり、割当土地使用権は無償で取得する土地使用権であることに加え、前者は譲渡、賃貸、抵当権設定の権利を含むのに対して、後者はそれを含まないこと(但し、例外あり)等を学びました。そこで疑問があるのですが、払下げ土地使用権は、使用収益する権利のほか、譲渡、賃貸、抵当権設定の権利も含むのであれば、所有権とどう違うのでしょうか?

先生:払下げ土地使用権には、期間の制限があります。払下げ契約に土地使用権の期間を定め、その期間内においてのみ土地を使用することができます。最高期間は法律で定められており、居住用:70年、工業・教育・科学技術・文化・衛生・体育用:50年、商業・観光・娯楽用:40年、総合その他:50年です。

生徒:その期間中である限り、土地使用権者は、所有権者である国に介入されずに土地を使用収益し、又は処分することができるのですね?

先生:その期間中であれば、国によって強制収用されることはないというのが、法律の建前です。しかしながら、「(国は)特段の事情のある場合には、社会公共の利益のため相応の補償をして回収することができる」という留保がついていますので、依然として強制収用される可能性はあります。

生徒:では、割当土地使用権は、どうですか?無償で割り当てられたものであることを考えると、強制収用される可能性がより高いのではないでしょうか?

先生:そのとおりです。割当土地使用権については、国が「都市建設の発展の必要性及び都市計画の要求に基づき、無償で回収すること」ができます。

生徒:土地上に建物を建てた場合にも無償で撤去されてしまうのでしょうか?

先生:土地上に建物やその他の定着物が存在する場合には、実際の状況に基づいて適宜補償することになっています。ただ、建物等の撤去に対して補償される金額については多くを期待できないのが現状のようです。

生徒:建物について聞きたいのですが、土地使用権を取得した場合、その性質が払下げであろうと、割当であろうと、その土地上に建物を建てることができますか?

先生:土地使用権の用途の範囲内であれば、建物を建てることができるでしょう。ただ、建物を建てた後、土地使用権を譲渡せずに建物だけを譲渡したり、又は建物を譲渡せずに土地使用権だけを譲渡したりすることはできません。土地使用権と土地上の建物の同時処分の原則が法律上定められています。

生徒:なるほど。土地使用権と建物所有権はセットで移転させなければならないのですね。では、土地使用権と建物所有権は同一の名義人でなければならないのでしょうか?

先生:はい。建物登記の際、建物所有権と当該建物が占有する土地の使用権の権利主体が一致していなければならないというのが法律の建前です。これを建物所有権と土地使用権の主体一致の原則といいます。

生徒:現在、中国の現地法人が土地使用権を賃借した上で、その土地上に建物を建てようと計画中ですが、当該計画を実行に移すと、その建物については登記を行うことができないのでしょうか?

先生:土地使用権の賃借人が建物を建てた場合には、土地使用権と建物所有権の分属という状態が生じます。その場合、上記主体一致の原則に従えば、建物について登記を行うことができないように思われます。しかしながら、このケースにおいて実際に建物所有権の登記を行っている例も見受けられます。この点は、必ずしも原則が貫徹されていないため、現地の土地管理部門に個別の問い合わせを行うことが必要となってきます。

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