2004年 9月16日(木)

第1回 「中国の土地制度」[経済]


今週から大渕愛子弁護士の「中国法教室」が始まります。新進気鋭の専門家が、中国の法律を分かりやすく解説。好評連載中の曾我貴志弁護士「中国法律基礎講座Q&A」と共に、毎週木曜日に隔週で掲載します。

先生:初めまして。本日は基本的な事項である「中国の土地制度」を取り上げてみたいと思います。

生徒:中国では私人が土地の所有権を取得し得ないというのは本当ですか?

先生:その通りです。中国の土地は、国家所有又は集団所有のいずれかであり、私有ではあり得ません。憲法及び関係法規は「都市の土地は国家に属し、農村及び都市郊外の土地は(別途定めのない限り)集団所有に属する」旨を規定しています。

生徒:なるほど。都市の土地は基本的に国有なのですね。道理で国有土地ばかり目に付くと思っていました。

先生:そうですね。外国企業に関係してくるのは、国有土地であることが多いでしょう。例えば、外商投資企業が国有土地を使用したい場合には、土地使用権を取得することになります。土地使用権には、「払下げ土地使用権」(中国語:「出譲土地使用権」)と「割当土地使用権」(中国語:「劃撥土地使用権」)があります。

生徒:私の理解が正しければ、払下げ土地使用権とは土地管理部門に払下げ金を支払って有償で取得する土地使用権であり、割当土地使用権とは土地管理部門が無償で(ただし、補償及び安定配置等の費用は支払う)割り当てる土地使用権ですよね。でも、具体的な権利内容の相違が分かりません。

先生:払下げ土地使用権は、基本的に譲渡、賃貸、抵当権設定の権利を含んでいます。つまり、使用収益する権利のほかに処分する権利をも含んでいます。それに対して、割当土地使用権は、基本的に譲渡、賃貸、抵当権設定の権利を含まず、使用収益する権利のみです。ここで両者とも「基本的に」という留保が付くのは、払下げ土地使用権であっても払下げ契約の約定に従って投資開発されていなければ譲渡又は賃貸をすることが出来なかったり、割当土地使用権であっても特別の認可を取得すれば譲渡することが出来たりするからです。ただ、原則としては、処分する権利の有無が大きな違いと考えてよいでしょう。

生徒:それならば、割当土地使用権を譲り受けることは基本的にできないのですか?合弁交渉相手である中国企業は、土地使用権を出資したいと言っていますが、それがどうも割当土地使用権のようなのです。

先生:まず、土地使用権証を提供するようお願いして、その土地使用権の性質を確認して下さい。土地管理部門に申請すれば登記を確認することも出来ます。そして、その土地使用権が割当土地使用権だった場合には、払下げ手続を経てから出資させる方が無難です。具体的には、中国企業が土地管理部門に対して割当土地使用権譲渡の認可申請をすると、土地管理部門が15日以内に回答してくれます。払下げを可とする場合には、中国企業と土地管理部門とが払下げ契約を締結し、契約締結後60日以内に中国企業が払下げ金を支払います。

生徒:払下げ金の金額はどのように決定されるのですか?

先生:競売や入札募集による払下げの場合は別として、合意による払下げの場合、その払下げ金は、原則として市又は県人民政府が決定する「最低価格」(標準地価の70%以上)を下回ってはなりません。ただ、割当土地使用権を払い下げる場合の払下げ金については、標準地価の40%を下回ってはならないと規定されています。そもそも割当土地使用権は、それ自体で既に使用収益する権利を内容としていますから、事実上払下げによって取得するのは処分する権利のみですね。そう考えますと、割当土地使用権を払い下げる場合の払下げ金が相対的に低くなることには一定の合理性があるといえるでしょう。

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