2014/12/18
低迷続くインド自動車市場:モディ政権の経済改革に期待
モディ政権が5月に誕生し、回復が期待された自動車の販売台数。結果は悲喜こもごも、といった印象となった。インド自動車工業会(SIAM)によると、1~11月の販売台数は前年同期比3%減の約292万台。高金利とインフレが購買意欲に影を落としており、自動車市場の回復にはまだ時間がかかりそうだ。

SIAMのスガト・セン事務局長は「今年1~4月は低迷が続いたが、2月に物品税を廃止した販売の押し上げ効果が5月以降に出ている」としたものの、「書き入れ時の祭事期に当たる9~10月は再びマイナス成長になった」と話す。
1~10月の乗用車の販売台数は前年同期比1%減、商用車は15%減という結果。ただ、11月以降は再び回復基調に乗るとみられており、セン事務局長は「来年の早い時期に需要は拡大する」と予想する。SIAMの発表では、11月の乗用車販売台数は前年同月比5.4%増、商用車は9.0%増とどちらもプラスに転じた。
新政権の決定で、自動車業界で大きな反響を呼んだのが、10月の軽油の価格統制撤廃だ。インド政府は2004年以来、軽油への補助金を支給していた。消費者は価格が安定しているディーゼル燃料を好み、自動車市場ではディーゼル車が半分以上を占める。今後は、軽油燃料とガソリンの価格差が縮まる見通しで、ディーゼル車とガソリン車の比率も縮まると予想される。
メーカー別の動きでは、1月に中型セダン「シティ」の第4世代がヒットしたホンダカーズインディア(HCIL)の強さが前年に続いて目立った。同社は13年に小型セダン「アメイズ」が発売からヒット。シティでも燃費性能の高さや、室内空間の広さ、スポーティーなデザインで、同セグメントのライバルとなる韓国系ヒュンダイ・モーター・インディア(HMIL)の「ベルナ」にを大きく差をつけた。ホンダは7月に多目的車(MPV)「モビリオ」を投入。ただ、生産台数が安定しない影響もあり、10月の販売は3,000台を割り込むなど、同セグメントでシティほどのインパクトは残せなかった。
小型車では相変わらずの強さを見せるマルチ・スズキ。10月には中型セダン「シアズ」を発売した。ディーゼル車の燃費がシティを上回る1リットルあたり26キロメートルを超えるなど、中型市場でもヒットを狙う。ただ、11月に入って早くも3,000台以上のリコールを出し、スタートでつまずいた形だ。
■SUVに注目
小型車が圧倒的人気を誇るインドだが、新しい動きも出ている。来年以降、各メーカーによる投入が加速しそうなのが、スポーツタイプ多目的車(SUV)だ。SUVでは、マヒンドラの「ボレロ」や「スコーピオ」のほか、トヨタの「イノーバ」、フォードの「エコスポーツ」といった車種が人気を集める。ここ数年は、ハイエンドのSUVに比べれば機能は劣るものの、価格が低い入門車の人気が高い。セン事務局長は「過去数年で、特にクロスオーバー型のSUVのエントリーレベルは、魅力的なセグメントになってきている」とし、「消費者にとって、SUVが手の届く存在になったことや、より大きな自動車を手に入れたいという願望が、セグメント拡大の要因となっている」と指摘する。「SUVは、車体が大きく、より長い距離を走行可能で、多くの人を乗せることができるため、上位中間層の夢を満たす存在」という。15年には、数車種が新たに発売になる見通し。
モディ政権の誕生を経て、2015年は自動車産業の本格的に成長軌道に乗ることが期待される。一方で、政府がは安全性能テストを義務づける方針を固めているなどとされるなど、新政策が導入される可能性も高い。特に、安全基準のほか、排出基準、廃車に関する規則、交通法などが焦点になると予想される。
(インド編集部・小堀栄之)
