2008/10/10

第4回 「閉じた」日本は見捨てられる


前回は日本人の間で「嫌中」「嫌韓」感情が強いことを見てきたが、日本人が排他的な態度をとっていては、中国人や韓国人も日本人を心から信頼することはできまい。この2国とは大変近いのに、お互いの理解が不十分なままでいいのだろうか。

日中間には戦争などの歴史問題を下地に、尖閣諸島や東シナ海の海底油田など様々な問題が横たわっており、残念ながら根強い不信感が残る。しかも日本で中国の位置づけが低いのと同様、中国でも日本の位置づけは低い。どちらも欧米志向、欧米優先だ。だから中国のエリートは欧米へ行く。

日韓の間にも、やはり歴史問題や領土(竹島)問題などが残っている。読売新聞と韓国日報による05年の共同世論調査では、日本人の59%が韓国を信頼しているのに対し、韓国人の90%は日本を信頼していないという結果が出た。

では中韓はどうか。韓国もかつては中国人を排斥した。しかしいまや韓国の最大の貿易相手国は中国だ。最近では韓国から中国への観光客や留学生が急増し、「漢風」ブームが起きているという。韓国の日本離れは明らかだ。日本と中韓は大変近い距離にあるが、中韓に比べ、お互いの理解が不十分なのは極めて残念だ。

■ビジネスの場でもすれ違い

日中双方のすれ違いはビジネスの現場でもよくある。石材商社・星光の安剣星会長によると、日本の石材市場は中国製品に9割を依存しており、石材貿易が止まれば中国側も半分以上の市場を失う。

ただ日本の業者の検品基準は厳しく、中国産石材にも品質面の問題や作り間違いが散見される。クレーム対応も良くないため、代金支払いを巡るトラブルが後を絶たないという。

しかしビザ発給や時間・経費の問題もあり、海を超えたアフターサービスは容易ではない。しかも石材は天然のもので手作業が加わるため、ある程度のばらつきはやむを得ない。

中国側は日本側の加工指示があいまいで代金不払いは悪質な詐欺だと怒る。そのあげく怪しい在日中国人に依頼して脅迫まがいの取立てを行うこともあり、事態を悪化させているという。日中双方が相手の立場を推し量れば、コミュニケーションが改善し理解しあえると思うのだが、どうだろうか。

■「厳しいぬるま湯」で「変人」を育てよ

日本人はとかく内向き思考で外国を排除しがちだ。日本市場の規模は大きいが、鎖国状態にあるかのようである。シリコンバレー在住のITコンサルタントである海部美知氏は、世界で孤立し、忘れられようとしている日本の姿を「パラダイス鎖国」と呼んでいる。非欧米・非白人の先進国日本は「孤高のマイノリティ」で、中韓との関係が微妙であり、他のアジア諸国からも一線を画している。日本のゆるやかな開国を促すためには「内なる黒船」が必要で、それがもたらす混沌を、「和を乱す」と排除してはいけないという。

内なる黒船とは異端の「変人」などのことで、これを育てるのが「厳しいぬるま湯」だ。「厳しいぬるま湯」とは、ビジネスでの競争とヒッピー的なユートピア精神文化が共存するシリコンバレーのように、実力主義だが暖かく居心地のよい環境をいう。そこでは変人が周囲の支援の中で「変化の触媒」として才能を発揮することができる。

日本が閉鎖的で中国人を排斥しがちなため、在日華人系企業の集積は他国に比べ弱いものとなっている。企業規模は必ずしも大きくなっておらず、飲食店のような業種が相当含まれている。これでは雇用創出力に乏しいばかりか、日本が華人ネットワークの力を活用できないことになる。ビジネスが流入せず、対日投資にはマイナスである。

経済関係について言えば、日本とアジアはすでに緊密だが、政治や国民意識は米国に依存したままだ。欧州諸国は相互に近接し、一体感を高めている。他方日本は他の先進国から離遠で、世界のみならずアジアでも孤立しつつある。四面楚歌にならないよう、気をつけなければなるまい。(次回は「日本は周辺国になってしまうのか?」をお送りします。)

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