2008/09/19
第2回・伸び悩む対日直接投資
諸外国に比べ、外資誘致の取り組みで遅れをとってしまっている日本。今回は現実問題として、対日直接投資がどの程度停滞しているのかを、具体的なデータを示して見てみたい。
まず対内直接投資のフローをみてみよう。2004年までの10年来は50億ドル超の流入が続いてきたが、05年は32億ドルの流入に減少。06年には68億ドルの流出超過に転じた。
地域別にみると、06年は西欧が39億ドル、北米が27億ドル、アジアが9億ドルの流出超過。外資系ファンドは既に05年頃から投資回収の動きをみせていた。
アジアをみると06年はシンガポールが11億ドル、台湾・韓国が1億ドルの流入だが、香港は21億ドルの流出。これは欧州大陸系証券会社の香港拠点が、東京支店の法人化のため投資した約1,000億円の一部を他のアジア拠点から回収したのが一因とも報じられている。
07年の対内直接投資は全体で222億ドルの流入超に転じた。うち北米が127億ドル、西欧が48億ドルで、アジアは16億ドルにとどまっている。
アジアに関しては07年には増加に転じたが、その金額はわずかだ。香港・台湾・韓国・中国は低水準で、シンガポールのみが対日直接投資を増やしており、07年は13億ドルとなっている。
実はアジア諸国にとって日本は主な投資対象ではない。香港の対外投資は中国が圧倒的だし、台湾の投資先も中国・米国が中心。シンガポールは近隣のマレーシア・インドネシアへの投資が多い。
■ストックは伸び悩み
日本貿易振興機構によると、日本の対外直接投資残高(ストック)は05年末3,882億ドル、06年末4,497億ドル、07年末5,468億ドルと拡大。しかし対内直接投資残高は05年末1,013億ドル、06年末1,077億ドル、07年末1,339億ドルと伸び悩んでいる。直接投資の流出超過状態が続いているのだ。
世界から日本への直接投資のストックをみると、06年末のシェアは北米41%、西欧39%、アジア8%と、まだまだ欧米先進国が中心。このほか租税回避地のケイマン諸島が8%を占める。
国富ファンドの多い中東やロシアは、統計上はまだ0%台にすぎない。一方アジアは04年末59億米ドル、05年末67億米ドル、06年末82億米ドルと増加してきてはいるが、絶対金額はまだ少ない。
アジアを個別にみると、香港は20億ドル前後で推移してきたが、06年末には20億ドルを割り込んだ。台湾は10億ドル台で推移している。他方、韓国は数億ドル程度にすぎない。中国はさらに低位だ。
逆に伸びているのがシンガポールで、04年末14億ドル、05年末22億ドル、06年末42億ドルと順調に拡大、いまやアジア最大の対日投資国となった。この背景には国富ファンドの存在もうかがえる。
■M&Aはわずか
独立系M&A専門会社のレコフによると、日本におけるOut-In(外国企業→国内企業)型のM&Aは、1996年には62件だったが、06年は179件、07年は308件に増えている。北米が151件、欧州が68件と多いが、アジアも76件に達している。1996年には各国とも数件にすぎなかったが、07年には韓国とシンガポールが16件、香港が15件に増えた。ただし全体に占める構成比はそれぞれ5%程度だ。(次回は「対日投資を阻むもの」をお送りします。)