NNAカンパサール

アジア経済を視る July, 2018, No.42

爆走、アジアの高速鉄道

爆走、アジアの高速鉄道

新幹線は勝てるか

1964年に世界で初めて最高時速210キロメートルの新幹線を実現した日本は、高速鉄道技術で世界をリードしてきた。それから半世紀。国内市場が円熟する中で、経済成長著しいアジアの旺盛なインフラ需要を取り込もうと、政府を中心に新幹線の輸出に力を入れている。一方、2007年に高速鉄道の運行を開始した中国は、10年余りで国内の高速鉄道網を急速に拡大。現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の下、国外の高速鉄道計画でも存在感を高めている。アジアを舞台とした高速鉄道の動きを、日本と中国を軸に追った。

  • 地図

    経験の日本、資金力の中国

    アジアの高速鉄道争奪戦、勝者は誰だ

    アジアの高速鉄道市場は、半世紀にわたる実績を持つ日本と、急速に力を付けた中国、世界の3大車両メーカー「ビッグスリー」(ボンバルディア、シーメンス、アルストム)を擁する欧州が激しく争う構図だが、専門家は「今や人材でも資金でも中国は日本をはるかに上回っており、技術力でも差が広まる一方だ」と指摘する。

  • 工学院大学特任教授・東京大学名誉教授 曽根 悟氏

    工学院大学特任教授・東京大学名誉教授 曽根 悟氏に聞く

    高速鉄道技術で日本は中国と連携を

    日本政府の主導によりインフラ技術の輸出が進められる中、新幹線の舞台は海外に広がりつつある。高速鉄道技術では、これまでライバルとなってきた欧州勢に加えて、中国が急速に存在感を高めている。海外展開を見据えた新幹線の未来像などについて、国内外の高速鉄道技術に詳しい曽根悟工学院大学特任教授・東京大学名誉教授に話を聞いた。

  • 石井 翔氏

    新幹線輸出はオールジャパンで

    新幹線の海外戦略

    インフラシステムの海外展開を成長戦略に位置付ける日本政府は、2020年に約30兆円の受注実績を上げることを目標に掲げる。海外の鉄道市場は年間24兆円の市場規模があり、21年までに年率2.6%の成長が見込まれている。特にアジアを中心に増加している高速鉄道を重要案件と認識する。

  • ASEAN 高速鉄道の現在地

    ASEAN 高速鉄道の現在地

    ラオスで中国の現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を象徴するプロジェクト「中国ラオス鉄道(中老鉄路)」事業のつち音が響いている。2016年に本格着工し、21年の開通後は一部区間で最高時速200キロメートルで運行する。総工費約60億米ドル(約6,700億円)は、ラオスの国内総生産(GDP)の半分に相当する。

  • 石井 翔氏

    乗車体験記

    世界最速列車復興号、上海から北京まで
    1300キロを4時間24分

    中国

    アジアで元気のいい鉄道大国といえば中国だ。日本の面積の25倍の広さを持つ国土には、約12万7000キロメートルの鉄道路線が敷かれており、そのうち時速250キロ以上で走る高速鉄道は約2万5000キロ。現在、中国鉄道の顔として活躍中の「復興号」(CR400)は、2017年6月末に登場した世界最高速列車だ。

  • newsselection

    アジアの不動産

    日系企業の積極的な投資が続くアジアの不動産業界。NNA POWER ASIAから関連記事をピックアップ。

  • 垣根を越えてビジネスを開拓せよ

    【世界で闘う同志たち】

    垣根を越えてビジネスを開拓せよ

    私たちが日常生活で使う自動車や家電などに欠かせない、フィルムからテープ、シリコン、接着剤、基板などの多彩な素材や部品類。数千~数万点に及ぶ素材や部品を仕入れ、メーカーなどに納めているのが専門商社の東和電気株式会社(東京都港区)だ。日本の自動車や家電メーカーが海外生産に移行したのに伴い、これまでにシンガポールや中国などアジア7カ国・地域に拠点を設けた。これら海外拠点の強みを生かし、時代に合わせて新たな分野に参入するために東和電気は海外6拠点でITシステム導入に踏み切る。国境を越えた同社の挑戦に迫った。

  • 工業団地&インフラマップ 高速鉄道編

    ASEAN一覧 工業団地&インフラMAP

    高速鉄道編

    ASEAN

    東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)の発足により、6億人を超える巨大な経済圏が動き出した。製造拠点と消費地を結ぶ幹線道路や物流施設などのネットワークも次々に整備され、その活用はすでに始まっている。域内の製造拠点である主要な工業団地や経済特区、交通インフラを一つの地図にまとめた。

  • 『紙の動物園』

    【アジアの本棚】

    『紙の動物園』

    前号で紹介した中国のSFアンソロジー『折りたたみ北京』の編訳者であるケン・リュウ(劉宇昆)は、現代の米国を代表するSF作家だ。代表作『紙の動物園』(原題:The Paper Menagerie)は2012年にヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞のSF分野での3大賞を史上初めて総なめにした。

  • 中国では無人コンビニが急増中。写真は先駆け的な存在の「ビンゴボックス(繽果盒子)」。商品はセルフレジでスマートフォンを使い決済

    【アジア業界地図】

    コンビニ編

    経済成長とともに消費者の購買力も高まり、店舗が増え続けるアジアのコンビニ市場。店舗数のランキングでは、日系大手4社が各地でランクイン。日本で培ったサービスと、商品開発力で競合との差別化を図っている。

  • マリービールのバンダラ社長。日本へは観光で訪れたことがあるという

    【意外な大国パキスタン(下)】

    “禁酒の国”でも生産
    名門ビール工場訪問記

    パキスタン

    パキスタンというと、テロ事件の報道や厳格なイスラム教の国というイメージが日本では強い。しかし、外資100%の流通業が認可されるなど外資誘致政策はオープンで、何より、人々はフレンドリーだ。そんなパキスタンで、日本人にとって最も意外なのはビール工場が存在することではないだろうか。

  • カンボジアフェスティバル2018

    【アジアインタビュー】BNK48

    「夢はタイと日本を結ぶアイドル!」

    タイ

    アイドルグループAKB48の海外姉妹グループとして、タイの首都バンコクを拠点に活動をするBNK48。昨年夏にデビューを飾るや否や、タイで社会現象的人気を巻き起こしている彼女たちが東京の「タイフェスティバル」に出演するため来日した。国民的アイドルの素顔に迫った。

  • カンボジアフェスティバル2018

    【アジア取材ノート】

    韓国で相次ぐセクハラ告発
    ビジネス界にも意識改革の波

    韓国

    米ハリウッドに端を発するセクハラ犯罪告発のムーブメント「#MeToo(「私も」の意)」が韓国でも広がっている。伝統的な男性社会や軍隊式の厳しい上下関係がまかり通っていた職場にも、意識改革の波が到来。管理職の立場にいる日系駐在員にとっては、韓国人スタッフへの指導やケアなどが重要な経営課題となりそうだ。

  • 森山正明氏

    【プロの眼】

    グローバル教育のプロ 第1回
    森山正明

    知っておくのは親の義務
    帰国子女受験の傾向と対策

    2020年に日本で教育改革が行われようとする中、アジア各地で教育を受け、帰国後に中高・大学受験を目指す子女にも十分な進学対策が求められている。英語さえ話せれば難関校にも合格できる時代ではなくなっており、保護者は赴任する前から頭に入れておく必要がある。北京、香港、シンガポールで教育事業に20年従事する教育活動家の森山正明氏に、グローバル教育のこれからを解説してもらった。

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